『CASSHERN』(04年)の紀里谷和明監督の5年ぶりの新作『GOEMON』が、5月1日から公開となる。人気アニメ『新造人間キャシャーン』を映画化した前作とは違い、今回はオリジナルストーリー。また、『CASSHERN』では、カメラをフィックスさせることで背景を“1枚絵”とし予算を切り詰めていたが、今回は製作費が増えたこととコンピュータ性能が向上したこともあって、大阪の町をCGですべて起こすことに成功。これにより、登場人物が走り回る姿を、縦横無尽に動くカメラで追うことが可能になった。5年の間に格段の進化を見せる紀里谷に、『GOEMON』、そして、その先に見えているものを直撃した。
──前作の『CASSHERN』と今回の『GOEMON』で、変わったところは?
紀里谷 まず、技術面が飛躍的に改善されましたよね。コンピュータはこの5年で早くなったし、自分たちのノウハウも飛躍的に進歩した。あと『CASSHERN』は非常に観念的な作品でしたが、『GOEMON』は方法論は同じでも、エンタテインメント作品を作るという大きな目標に向かっていた作品。挑戦する方向も異なっています。
──今年1月の完成報告記者会見のときに、世界配給について触れていましたが、監督は世界をいつも意識している?
紀里谷 意識するというより、そこにいかざるをえないですね。日本のマーケットを考えると、大体、予算が決まってしまう。プロデューサーも兼ねているので、これ以上、予算をかけると回収不可能というポイントもわかる。そのギリギリのラインを見たときに、監督としては、あと、5億、10億あればと思っても、プロデューサーとしては、そのお金は出せない。なぜなら、そこまでかけても回収できないから。では、予算獲得のためにはどうしたらいいのかと言えば、マーケットを広げていくしかない。マーケットを外に見ていかない限り、作りたいものが作れないんです。
──ハリウッド並に製作費をかけたい?
紀里谷 ハリウッドの平均製作費が60〜80億円くらい。大作となれば100億円超えもざら。だったら俺に30億円くれと。そしたら、どんな映画でも作ってみせる。それくらいの自信はありますよ。ただ、それが、マーケットが日本国内だけだと不可能なんですよ。リクープ(回収)のハードルがとてつもなく上がり、ビジネスとしてはリスクが大き過ぎる。だからマーケットを広げようと。かつて、トヨタやホンダといったクルマメーカーや、パナソニックのような家電メーカーがやってきたことと同じですよ。
──『GOEMON』の世界での手応えは?
紀里谷 今はヨーロッパでのセールスをほぼ完了し、北米を攻めている段階。映画賞のような評価ではなく、ボックスオフィス何位といった数字を上げていくのが第1の目標ですね。まずは日本語の映画で、どこまで世界に挑戦できるか。『GOEMON』でそれを試したい。
──豪華キャストも魅力ですが、キャスティングも監督が決めている?
紀里谷 そういう質問をよく受けるんですが、監督が決めるのが普通ではと思ってしまうんです。俺は、自分の作品だから自分で決める。そうでなかったら、単に雇われて監督しているだけになってしまう。
──自ら電話してオファーしたりもする?
紀里谷 自ら電話したこともありますよ、事務所に。受付に電話して、紀里谷と申しますが、誰々をキャスティングしたいんですけど、どのようにしたらよろしいでしょうか、みたいな(笑)。相手から見たら完璧なイタズラ電話ですよね。最初はそんなこともありましたが、さすがにそれはまずいと。今はきちんとキャスティングディレクターを通してオファーするようになりました。
『GOEMON』は5月1日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開
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