ロシア出身のタレント、コメンテーターで、YouTuberの小原ブラスが4月25日、都内で実施されたドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』の特別試写会に登壇。ウクライナの現状や本作について語った。
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小原ブラス、ウクライナの現状語る「簡単な言葉で言い表せへん」
ウクライナで現在起こっていることに対する率直な思いを尋ねると、小原はゆっくりと言葉を選びながら「簡単に『ひどい』『許せない』とかいろいろ言うことはできるけど、(ウクライナからの)ああいう映像を見てるとそんな簡単な言葉で言い表せへんなって実感しています。現状に対し、言葉が出てこないし、理解が及んでいないです。映像やSNSの情報に触れても、まだ僕に人間というものが理解できておらず、僕の簡単な感情で評価することもできないし、どうしたら(戦争を)止められるかもわからない…。自分が信じていること、少しでもできることはやってるけど、でも侵略を止めるために戦地に行って戦うとか、自分の命を犠牲にすることもできない。キレイごとを言っても、安全圏にいたいし、いちゃう。何を言っても言葉が空っぽで飛んで行っているような感覚で…」と己の無力感を口にする。
その上で「この映画を見てあらためて思ったのは、ロシアは侵略の理由としてウクライナのNATO加盟、東方拡大を抑えるためだと言っているけど、愛を求めていたオードリーが愛を与えたように、平和がほしいなら自分たちも与えんとアカンちゃうのかなってこと。安心がほしいなら、自分が安心を与えないといけない。それを力で無理やりという動きは、安全にはつながらない!」と武力による行動を断罪。「この映画がロシアで上映されるのかわかんないけど、そういうところをもしも、ロシアで上映されたら見てほしい」と訴えた。
晩年のオードリーは、知名度を活かし、自らを「広告塔」にしてユニセフ国際親善大使の活動に全てを捧げた。小原は彼女のこうした行動・思考に共感を示し「今、僕は意識的に知名度、発言力が欲しいと思ってて、それは今の日本、世界で一部、変えたいことがあるからです。それを自分の言葉で伝えて、変えられるのかわからないけど、影響を与えたいという目標があります。その目標はまだ言いませんけど、今日のギャラでは…(笑)」と冗談めかしつつ、強い影響力を手にして、社会を変えたいという思いを抱いていることを明かす。
一方、海外出身という自らの出自であるがゆえに、ストレートに日本の社会への思いを口にできないことがあるという苦悩も吐露。日本の社会の問題点などについて「子どもの頃から思っても、それを口にすると『じゃあ、生まれた国に帰れば?』という目で見られるんじゃないか? という思いがある。よく『歯に衣着せぬコメンテーター』とか言われますけど、メッチャ歯に衣着せまくってますよ!」と苦笑交じりに語る。さらに「そうやって、溜まってきた思いがいっぱいあることに気づいて、やっとある程度、その形が見えてきたし、言ったことに共感してくれる人も増えてきました。だからこそ、(社会の中で)見えていない少数派の“何か”を自分が表に出すことができるんじゃないか? 『多様性」と言われて、少数派の人たちも生きやすくなっているかもしれないけど、実際は『ここまでは許されるけど、ここは許されない』というのがあって、許されない少数派がまだまだいると思うので、そういう人たちのお手伝いができたら」と語った。
その一環として小原は、一般社団法人「外国人のこども達の就学を支援する会」の理事長を務める。この活動について小原は「外国人の人とつながる中で、学校に通っていない子がたまにいることに気づきました。海外の労働力を受け入れて、彼らの子どもたちも日本に来るけど、公立校だと日本語がわからず、なじめないし、プリントに何が書いてあるかさえわからず辞めてしまう。そういう子たちが(コロナ禍の前の時点で)2万人います。海外の移民問題でも、そういう子たちが集まってギャング化したり、外国人が治安悪化の原因と思われて『受け入れるのをやめるべき』と衝突が起こったりするし、日本でもそれが始まりかけています。将来的に、日本人が外国人を嫌いになると生きづらいし、平和な日本であるために今、手を打つべきだと思って、『何かできることはないか?』とそういう団体に声を掛けたら『発信力がないので、発信する立場になってもらいたい』と言われました」と理事長に就任することになった経緯を説明し、理解を訴えた。
オードリー・ヘプバーンは「360度どこから見ても完璧な人」
小原は、オードリーが63歳で亡くなったのは1歳の時だったため、リアルタイムではその存在について「知らなかった」というが、その後、映画や友人の家に貼られたポスターなどでその存在を認識するようになり「歴史上の“美”を代表するような人物であり、360度どこから見ても完璧な人。『本当にいたのか?』と思うような存在」とその印象を語る。若い世代にとっては“太眉の発祥の人”という認識を持っている人も多く「『オードリーみたいな眉がいい』と言う若い子もいるし、いまだにその在り方が継承されていると思う」とその偉大さについて語る。
映画を鑑賞し、素の人間としてのオードリーの存在を目の当たりにし「人やったんや…」と思ったという小原。「弱い部分もあったんだなと。完璧でない弱い部分を見せてくれて、『あ、弱くてもいいんだ』と自分の中でも安心できました」と語る。
また、自身と共通する点も多々感じたそうで「彼女はずっと愛を求めていた人。世界中からメチャメチャ愛された方だけど、それでも一番追い求めていたのは愛だったんだなと。僕も、夜とかに『まだ愛されてへんのかな?』『もっと人に愛されたい』と悩むことがあります。ただ、最終的に彼女がしたのは『愛を与えること』であり、与えない限り満足できないと気づいたんだと思います。僕も、自分主体で見るんじゃなく、まずは愛したいなと。自分がほしいものをまず人に与えないといけないんだと目を覚まされました」とオードリーの生き方に気づきをもらったと明かした。
本作を今の時代に鑑賞する意義について尋ねると「オードリーは、第二次世界大戦中に地下室でバレエを踊っていたんですね。地下室に逃げている時でも、バレエをみんなに見せて、ちょっとでも紛らわせようと、楽しいことを見つけようと努力してたんです。苦しい中でも、楽しいことを探す――コロナ禍もそうだし、今の戦争の時代にもそれは大切なことだと思います。どんな苦しい中でも、楽しいことを見つけないと人間は生きていけない、喜びを感じることを忘れてはならないと感じます」と言葉に力を込めた。
また、映画の中のオードリーの言動で特に印象的だったというのが、夜中に急に思い出してしまうほどの父親への強い思いだったという。小原自身、5歳で両親が離婚し、日本にやって来たが「新しいお父さんが愛情を注いでくれたので、正直、そこまで(実の父への)思いはなかったんですけど、子どもの頃の辛かった思いは、人生に長く影響を及ぼすんだと感じました。戦時下でのお父さんとの別れの衝撃が心に残っていて、負の思い出としてずっと引きずってたんだなと。戦争で子どもが苦しんだり、泣いている姿を見ると、いたたまれへんかったんだろうなと思います。そこで『子どもを助けたい』という気持ちが芽生えていったんだと思う」とオードリーの子どもたちへの思いの強さや晩年のユニセフ国際親善大使としての活動の原点に思いを馳せた。
『オードリー・ヘプバーン』は5月6日より全国ロードショー。
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