実はみんなが奥底で意識する「部落問題」をときほぐす、衝撃の3時間25分!
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『私のはなし 部落のはなし』予告編公開
「部落差別」の起源と変遷から、根強く残る差別の現状までを丸ごと描いたドキュメンタリー映画『私のはなし 部落のはなし』が5月21日に公開される。このたび、予告編が公開された。
予告編には、満若勇咲監督が大ファンだという4人組インストゥルメンタルロックバンドMONOの書き下ろしにのせて、「なぜ、ありえないはずのものが、ありつづけるのか?」のテロップと共に、様々な立場の人々が現実を語り、意思を表明していく。
満若監督は、本作品への思いを次のように語った。
「現在の部落差別は、その根深さとは裏腹にとても見えにくく分かりづらい。多くの人にとって部落問題は身近な社会問題ではない、というのが正直なところだろう。ぼくも映画制作という機会がなれば、意識することはなかったように思う。『部落問題』を題材にした映画作りは難航した。カメラには映らない。けれど確かにそこにあるものを、どのように映像で表現すればよいのだろうか? 悩んだ末に、ぼくは人々の『はなし』を紡ぐことで、意識の奥底にある『部落問題』の存在を感じさせることが出来るのではないかと考えた。そのために3時間25分という長さが必要だった。部落問題を解決する道はまだ見つかっていない。撮影することは当事者の方々が差別を受けるリスクを伴う。そのような現実のなか、覚悟を持って今回の撮影に応じてくださった皆さんに心から感謝します」
プロデューサーの大島新は、ここ数年持ち込まれた多くのドキュメンタリー映画の中でプロジェクターとして参加したのはこの作品だけだという。
「出資を決め、企画が動き出してからおよそ2年後、3時間におよぶ編集の第1稿を見た時の驚きは忘れられない。やろうとしていることのスケールの大きさに圧倒された。期待を遥かに上回る意欲作が誕生しつつあるという予感に、『おれの勘は正しかった!』と叫びたくなった。この映画は、まことに饒舌である。そしてその饒舌さゆえに、単純な要約を許さない。だから見た人は、それぞれに受け止め、自らの思いを持ち帰って解釈をするしかない。私はプロデューサーとして、このとんでもない作品をきちんと世に届けなければと、身の引き締まる思いでいる」
差別は過去の歴史ではなく、いまの自分事
さらに、角岡伸彦、武田砂鉄に加えて、小林エリカ、鈴木智彦、瀬尾夏美、中島岳志、星野智幸ら著名人からの推薦コメントも到着した。
フリーライターの角岡伸彦は、「被差別部落は、なぜ残ったのか。中世から現代に至るまでの共同体の歴史をたどりつつ、さまざまな立場の人びとが、自分と部落を語った傑作ドキュメンタリー」と本作品を紹介。
ライターの武田砂鉄は、差別が過去の歴史ではなく、いまの自分事だと訴える。「具体性がないまま膨らみ、実態を確認せずに強い拒否反応だけが生まれる。それは、今、この社会のあちこちで起きていることではないか。歴史を知ると、強烈な問いが現在の自分に向けられる」。
作家、マンガ家の小林エリカは、「たがいに分かり合えない、それでも分かりたい、という思いの結晶が、きっとこの映画なのだ」と分析する。
フリーライターの鈴木智彦は、「私が住む東京・練馬区にもかつて被差別部落があった。漫画家の白土三平はその体験から『カムイ伝』を誕生させた。私のテーマである暴力団も、被差別部落や貧困と密接な関係にある。なのに原稿で被差別部落問題に触れるのを躊躇してしまう。抗議も糾弾もされていないのに。私の中に部落差別が存在しているから恐れるのではないか。私は本当に差別をしていないのか。何度も考えさせられた」と自省した。
アーティスト/フィールドワーカーの瀬尾夏美は、「いま、それぞれの立場に置かれた人間たちの『部落』をめぐる朴訥な語りと、過去の資料を読み直そうとする眼差しに支えられたひとつの映画によって、学びの機会がやわらかく開かれている。わからないからと避けてきたその扉を開くと、そこには、『私』に向けられた問いが待っている。共に、学び始めませんか。すこしでもマシな未来のために」と呼びかける。
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志は、「部落問題は話題にしづらい。しかし、この映画に出て来る人たちは、みんなよく話す。明確な答えがあるわけではない。だからこそ、見る者は『はなし』に加わり、差別を乗り越える共同作業に誘引される。新しい地平を開く傑作だ」と本作品を讃える。
小説家の星野智幸は、この映画を「部落差別はこんなに悲惨だ」とか「差別はやめよう」と訴える作品ではないという。
「差別される人、差別する人、自分は第三者だと思っている人に、ひたすら思うところを語ってもらうだけだ。だから、あらゆる立場の観客を拒まない。でも、見た後には、どんな告発のドキュメンタリーよりも、『部落差別ってマジしんどすぎる』と肌で実感するのではないか、と私は思う」
ノンフィクションライターの石戸諭は、「多くの人がややこしいと思って、遠ざけてきた問題を文字通り直視した作品。人々の語りから解きほぐすことで、公式にはないはずのものを、そして目に視えないものを確かに『そこ』に存在させた」と本作品の取り組みに賞賛をおくる。
映画研究者の三浦哲哉は、「タブーを撃つ、大胆な切り込み」と賞賛。
「いたずらに問題を再燃させないための細やかな配慮。優しさ。TED以上の情報提示力。構成の妙。画面に息づく、取材に応じてくれた方々へのまっすぐな尊敬と愛情。驚くべき総合力の傑作だ。観客の理性、感情、判断力、すべてに訴えかけ、複雑に絡まりあった問題の核心に連れていってくれる。自分 が何も知らなかったことがしみじみ分かった」
コミュニティデザイナーの山崎亮は、「地域づくりのワークショップをしていると、たまに『部落のはなし』が出る。しかし、根掘り葉掘り聞き出していい雰囲気ではない。だから、気になるけど理解が進まない。この映画はそれを『私のはなし』として聞き出してくれた。おかげで理解は進むが、同時に新たな問題意識も生まれる」と本作品を紹介した。
見えづらい差別の構造を鮮やかにときほぐす
本作品は、現在法律や制度のうえで存在しないはずの「部落」による差別について、屠場とそこで働く人々を写した『にくのひと』(07年)が各地で上映され好評を博すも劇場公開を断念せざるをえなかった経験を持つ満若勇咲が監督したドキュメンタリー作品。その起源と変遷から近年の「鳥取ループ裁判」まで、堆積した差別の歴史と複雑に絡み合ったコンテクストを多彩なアプローチでときほぐし、見えづらい差別の構造を鮮やかに描きだす。
『私のはなし 部落のはなし』は、5月21日に公開される。
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