原発事故の起きた“フクシマ”に暮らす子どもたちと放射線の現状を追ったドキュメンタリー『A2-B-C −放射能と子どもたち−』の上映イベントが11月28日に福島フォーラムで行われ、イアン・トーマス・アッシュ監督が作品に込めた思いなどを語った。
・高レベル放射性廃棄物の処分をテーマにしたドキュメンタリー映画が緊急公開!
福島と同じくレベル7の原発事故以降に子どもたちに甲状腺異常が発見されているチェルノブイリのあるウクライナ。本作は、そのウクライナの人権映画祭で上映されるや、大きな衝撃と共に並々ならぬ関心を集めドキュメンタリー・グランプリを受賞したほか、核実験が行われたビキニ環礁が近いグアムの国際映画祭では最優秀賞を受賞、いちはやく原発停止を発表したドイツのフランクフルトニッポン・コネクション映画祭でもニッポン・ビジョン賞を受賞と国際的に高い評価を受けている。
アッシュ監督は、福島原発事故発生後の福島の人々を取材するなかで、子どもたちにある変化が起きていることを知る。現在、福島では59人の小児甲状腺ガン患者(悪性ないし悪性疑い)が報告されており、作品中である母親は「県内で子どもたちを対象に行われた甲状腺検査で、(嚢胞やしこりがあると判定される)A2判定を受ける子どもたちが昨年は28.2%だったのに、今年は43〜44%に増えている」と訴える。本作は、大手メディアではほとんど報道されないそんな“現実”を追った作品だ。
上映後、ある来場者は、事故直後はしていたマスクを次第にしなくなり、放射線がもうなくなったかのように行動してしまったと話し、「目をそらしていたものを、改めて突き付けられた感じがした」とコメント。監督は「頑張りすぎない気持ちで対応すべき」とし、「ガンになってからでは遅いのではないでしょうか? 10年後『もっと気を付けていればよかった』という後悔よりも、『あのときはちょっとやりすぎたね』という後悔のほうが、いいんじゃないでしょうか」と話していた。
また、我が子を避難させているという出演者の1人が、アッシュ監督からの取材を受けた際に「どこの雑誌もどこのテレビ局も真実を書いてくれないなかで、(だったら、アッシュ監督の作品を通して)世界から発信するしかない、世界から守ってもらわないといけないと思った」と語ると、監督は「みなさまの大事なお話しを預かっているという気持ちです。この映画は単に道具です。福島のみなさまの現状を伝える道具なのです」と責任の重さを噛みしめていた。
『A2-B-C −放射能と子どもたち−』は2014年に全国順次公開される予定だ。
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