【元ネタ比較!】子どもたちをくぎ付けにするゾロリ、映画版でもその魅力は全開!

『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』
(C) 2013 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』
(C) 2013 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』
(C) 2013 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』
(C) 2013 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』
(C) 2013 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会

『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』

実は非常に多くの小学生ママが読書において熱いバトルを繰り広げていることは意外と世間では知られていない。それは“いかにして子どもに「かいけつゾロリ」シリーズを読ませないか”ということだ。いや、いかにそれ以外の本を読ませるか、と言う方がより正確か。それくらい「かいけつゾロリ」にハマる子どもは多く、ハマったが最後、本といえば見事に「ゾロリ」しか手に取らなくなる。

[動画]『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』予告編

「かいけつゾロリ」シリーズはいたずらの王者を目指すキツネのゾロリが、子分の双子のイノシシを従えて修行の旅をしながら活躍するさまを描いた痛快な児童書だ。1987年に第1巻が発売されてから現在でもコンスタントに新刊を発行、最新巻は第53巻となるからそれだけシリーズも豊富であり、基本的には1巻完結式だからわざわざ図書室で順番待ちをしなくても気軽にどの巻を読んでも楽しめるわけで、かくて子どもたちは「ゾロリ」しか読まなくなる。ちなみに累計発行部数は驚異の3500万部超え、2013年7月発売の最新巻は一般書も含めた総合ランキングで2週連続トップ5入りを果たす実力だ。

大きい字で読みやすい文章なのはもちろん、文字だけのページは皆無に等しく、吹き出しが用いられたり時にはコマ割りまでされて漫画仕立てになったりする。さらに、子どもアンテナに引っかかる要素満載で、タイトルからして分かるように頻繁にダジャレが登場し、子分の双子イノシシ・イシシとノシシの得意技がオナラであることをはじめとして下ネタも飛び出し、かくてママさんたちは、うちの子はこんなものばっかり読んで!キーッ!となるのである。

しかし、これほどの現象が巻き起こっているのに案外話題になっていないのは、子どもがハマる時期が小学校低学年とピンポイントだからだろう。高学年になっても「ゾロリ」しか読まない子どもは聞いたことがないのだからして、そうそうママさんも目くじら立てないでいただきたい。好きな本があるのは良いことだし、短く熱く一過性であればあるほどノスタルジックな思い出として胸に刻まれるというもの。大人になってから読むと懐かしく、また「ゾロリ」はいつだって裏切らない。

そう、大人が読んでも気持ちよく童心に帰してくれる普遍的な良さが、「ゾロリ」にはある。そこには原作者である原ゆたかの子どもたちへの愛も詰まっている。下品さや不潔感はない下ネタで子どもを惹きつけて読書への扉を開き、めいっぱい楽しませようとする徹底した姿勢も、根はいい人なゾロリのキャラクターにも温かい愛を感じさせるのだ。

そんな「ゾロリ」の魅力は、映画版でも損なわれずにピカピカ輝いている。原作第40巻を映画化した『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』では、ゾロリはいつものようにイシシとノシシを引き連れて、台風で海に放り出されてしまったタマゴを仲良しの恐竜家族のもとに送り届けるために大冒険を展開する。この厚〜い人情がゾロリのいいところだ。そしてゾロリと言えば発明とひらめきの天才で、映画版でもそのパワーを遺憾なく発揮。それどころか原作には出てこない発明品や工作品も数々登場する。また、原作では発明品や場面を矢印で引き出しては注釈をあちこちに施す細かい説明が子どもの探究心をくすぐるのだが、それも映画版ではイシシとノシシのダジャレシーンで味わえる。イシシたちがダジャレに合わせて手近にあったガラクタで動物を作るのだが、そのときに用いたガラクタを一つひとつ矢印で説明するのだ。目まぐるしく進行するが、見逃しちゃいけない。そうそう、ぶっちゃけ話や宣伝に原作者・原ゆたかが出てくる、これまた子どもが食いつく裏方登場も原作にはつきものだが、映画版ではイシシとノシシが活躍を見せるオナラシーンの解説で原ゆたかが登場。ちなみに声も本人というサービスぶり!

また、今回のヒロインのディナは映画版オリジナルのキャラクターなのだが、お嫁さんとお城の獲得はゾロリの2大野望なわけで、そこもおさえてて嬉しい。タマゴを恐竜家族に届けるならただのいい人だが、私利私欲もあるからこそのゾロリなのだ。ゾロリの私利私欲の象徴であるかわいこちゃんのお嫁さんと豪邸を投入して原作第40巻では欠けているアイテムを補い、原作よりもゾロリらしさを出すとはやってくれるじゃないか。

映画版というか、ひいてはアニメ化での唯一難点をほじくり出すなら、全体的にやや洗練されていること。たいていのアニメ化に言えることだが、絵柄の線が細くシャープになり、顔つきも目が大きく位置が下のほうについてキャッチーな雰囲気になっている。声優はテレビシリーズに引き続きゾロリ役は山寺宏一で、七色の声を操る山ちゃんの声のなかではオーソドックスなイケメン声。ディナ役は今や紅白歌手でもある水樹奈々と、こちらも美人声。原作に漂うムードより少し垢抜けているかな、とは感じる。

でも、そんなことは気にもならないくらい原作の良さを生かし、恐竜やクジラのものすごい角度でのアップなど映画ならではの迫力もあり、こんなゾロリが見たかった!となること請け合い。さらに劇場で子どもから学生までもらえる来場者プレゼントは“おならマシーン”、誰もがもらえる前売り特典はゾロリの顔型がかわいい“かいけつゾロリのおたからきんちゃく”と、またも子ども心くすぐるグッズになっている。子ども時代のなかった大人なんていない。大人も自然と子ども心を取り戻して、子どもへの愛をたっぷり感じながら純粋に楽しめるエンターテイメントだ。(文:入江奈々/ライター)

『映画 かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』は12月14日より全国公開される。

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