【元ネタ比較!】2013年原作あり映画ベスト10前編/『陽だまりの彼女』のオチに愕然

「なんじゃそりゃ!?」なオチの『陽だまりの彼女』
(C)2013 映画『陽だまりの彼女』製作委員会
「なんじゃそりゃ!?」なオチの『陽だまりの彼女』
(C)2013 映画『陽だまりの彼女』製作委員会

漫画、小説、テレビシリーズ、アニメにゲームなどなど、2013年もたくさん製作された、原作・元ネタありきの映画。独断と偏見に満ち満ちた2013年元ネタ映画ベスト10を発表するとしよう。

マイナス要素満載! 大友克洋らの『SHORT PEACE』

まずはワーストとも言える10位は勇気を出して『SHORT PEACE ショート・ピース』だ。『AKIRA』の大御所・大友克洋をはじめとした気鋭の監督たちによるオムニバス・アニメだが、お仕置きの意味も込めて最下位に。オムニバス作品のなかで大友克洋による同名漫画を原作に持つ『武器よさらば』が元ネタ作品となるのだが、原作が小気味いい短編漫画なのに中途半端にディティールを膨らませたのが敗因だろう。軍事兵器にこだわりを見せたがために、テンポは失われ、肝心の戦争に対する皮肉もぼやけてしまい、原作ファンとしては非常に残念。オムニバスのなかの1編、大友克洋が監督した『火要鎮』は実質的な元ネタ映画ではないが、表面的な綺麗さしか感じられず期待はずれだったこともマイナス要素になった。

「なんじゃそりゃ!?」なオチの『陽だまりの彼女』

よくまあ映画化したな、というのが9位の『陽だまりの彼女』と8位の『ガラスの仮面ですが THE MOVIE 女スパイの恋! 紫のバラは危険な香り!?』。冴えないけど優しい青年と秘密を持ったヒロインの恋愛を描いて大ヒットした『陽だまりの彼女』は原作小説を読まずに映画のほうを先に見たのだが、オチに愕然! たびたび出てくる、いかにもな伏線にまさかまさかとは思っていたが、本当にそのまさかだとは。原作を読んでみると、それほどオチに違和感はない。映画というものは主観を表現するのに向いてない媒体だと痛感した。原作は恋に落ちた青年の主観と思えばいかにもな伏線もサラッと読めるし、ファンタジックなオチもあまり抵抗なく入ってくる。しかし、映像として客観的にリアルに表現されると話は別。しかも、丁寧にこまやかに描けば描くほど、真剣に見てたのに、なんじゃそりゃ!?となってしまう。夏木マリ演じる映画オリジナルの謎の女を登場させたように、いっそのこともっとファンタジーに寄せたほうが良かったのではないか。

8位の『ガラスの仮面ですが〜』は良い意味でよくぞ映画化した、というか、これを“映画化”というのはアッパレ!と痛快な思いがした。なんてったって、れっきとした美内すずえの不動の人気を誇る漫画「ガラスの仮面」を原作とした映画版なのだ。たとえ月影先生が女スパイになろうとも、『秘密結社 鷹の爪』シリーズのDLEによるペラッペラの動きを見せるフラッシュアニメであろうとも、だ。バカにしてるのか!?と見せかけて、意外と本質を見抜いたパロディの数々に原作へのオマージュを感じずにいられない。

乙武洋匡主演、意外な掘り出し物の『だいじょうぶ3組』

7位は順位として高いわけじゃないが、個人的には予想外の高評価でベスト10入りさせることとなった『だいじょうぶ3組』。乙武洋匡が実際に行った教師体験をもとにしたフィクションの小説の映画化だ。まあ、鼻につく通り一遍の感動作だろうと高をくくって見ると、意外にもなかなかの掘り出し物だった。生徒である子どもたちがいわゆる子役演技に陥らず、活き活きとしてるのだ。監督は『きいろいゾウ』の廣木隆一が手がけ、主演の乙武洋匡と子どもたちを本番で初めて引き合わせ、リアルな表情を捉えようとした姿勢が功を奏したのだろう。乙武洋匡との共演シーンだけでなく、自転車を走らせる何気ないシーンも子どもたちは光っていた。ただ、好き嫌いは別にして原作の持つ乙武らしい愛嬌ある茶目っ気は息を潜めて、道徳的な方向性の一辺倒となったのは惜しい。あ、そうそう、主演の乙武はと言うと、演技達者なわけはないけど、かと言って乙武役は物理的に彼にしかできそうにないし、まあいいんじゃないの、あんなもんで。

続いて、上半分の上位組に入れなかったギリギリ下位の6位は『共喰い』だ。芥川賞受賞の際の「もらっといてやる」発言からくる原作者・田中慎弥のイメージといい、性と暴力と親殺しという題材ならもっとアグレッシブに描いて欲しかったのに、どうも生ぬるい手応えが否めずに惜しい。川辺のドブ臭さと体液の入り混じった不快なにおいや閉塞感は感じられずこざっぱりと無味無臭で、作品のキモである父親像も乱暴な与太者と単純化された点もマイナスポイント。しかし、原作にはないオリジナルエンディングに果敢に挑戦した脚色は、出来不出来は置いておいて、元ネタ映画としては面白い。(文:入江奈々/ライター)

【元ネタ比較!】2013年原作あり映画ベスト10後編はこちら

2013年 原作ありき映画ベスト10

1位 『ゴッドタン キス我慢選手権』
2位 『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
3位 『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』
4位 『ピカチュウとイーブイ☆フレンズ』
5位 『潔く柔く』
6位 『共喰い』
7位 『だいじょうぶ3組』
8位 『ガラスの仮面ですが THE MOVIE 女スパイの恋! 紫のバラは危険な香り!?』
9位 『陽だまりの彼女』
10位 『SHORT PEACE』

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