【2014年の期待作1】ヌイグルマーにロジャー・コーマン、オタク心をくすぐる作品続々
2014年前期もなにやら気になる映画がたくさん公開される。まずは1月に公開されるオタク心をくすぐる2作、『ヌイグルマーZ』(1月25日公開)と『アタック・オブ・ザ・50フィート・チアリーダー』(1月29日公開)だ。
『ヌイグルマーZ』は大槻ケンヂの楽曲「戦え!ヌイグルマー」の世界観を、『電人ザボーガー』の鬼才・井口昇監督がしょこたんこと中川翔子を主演に迎えて映画化したという、そうそうたるメンツを揃えた特撮ヒーロー・アクション。見る前から胸焼けしそうな顔ぶれでどこまでゲップが出るほど濃厚に攻めてくるのか楽しみだ。
反対に大味を追求してほしいのは、“B級映画の帝王”と異名を持つロジャー・コーマン製作による『アタック・オブ・ザ・50フィート・チアリーダー』。50年代に製作されたカルト作『妖怪巨大女』の系譜を継ぐ由緒正しいB級作品で、50フィート=15メートルに巨大化したチアリーダーが巻き起こす騒動を描いたパニック・コメディだ。ポップコーン片手に楽しみつつ、学部長役をつとめる、今年4月に米寿となるというロジャー・コーマンの姿も拝みたい。
オタク少年がヒーローになって活躍するさまをブラックにハードに描き、オタク心を鷲掴みにしたあの痛快作の続編『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』(2月22日公開)にももちろんロックオン。前作をヒットさせた大きな鍵は、クロエ・グレース・モレッツを一躍スターダムに押し上げたヒット・ガール役だろう。虫も殺せなさそうなあどけない少女がいともたやすく虐殺するというあのギャップが衝撃的だった。しかしながら、成長という自然現象でクロエ・グレース・モレッツは周知の通り大人びてしまっており、ヒット・ガールもセクシーに路線変更するとか。おまけにジム・キャリーも参戦して通例通り続編はスケール感アップしている。この手の作品はメジャー感やスケール感と面白さが反比例することが多いから心配だ。
話題作では実写映画版の『魔女の宅急便』(3月1日公開)も注目だ。角野栄子による児童文学が原作だが、当然、宮崎アニメ版の印象が強すぎることは否めない。その呪縛からどれだけ逃れることができるのかがポイントだろう。監督はハリウッドで「寄生獣」を実写化する企画が流れてしまった『呪怨』シリーズの清水崇だが、さてどこまで手腕を発揮できるか。オーディションで選ばれた新星・小芝風花が演じるヒロインを見る限りは、どうもアニメ版のイメージを引きずってしまっている気がする。飛行シーンに至っては、宮崎アニメを超えることは難しいとしか言いようがない。うまくいけば、実写ならではの生身の人間が演じる強みで、自立やアイデンティティの確立といった、少女の成長の深みあるドラマとしても見応えを持たせてくれていればいいのだが。
原作ものというか、“元ネタ”番外編という感じでチェックしたいのは『レゴ(R)ムービー 』(3月公開)で、あのブロック玩具のレゴをモチーフにした3DCGアニメーションだ。アクション要素も備えた玩具・レゴニンジャゴーのテレビアニメはあったものの、レゴ本体の映画化までしてしまうとは。これをストーリー仕立てでスクリーンで見せるとは、ボードゲームを映画化した『バトルシップ』以来の驚きだ。
まさかの映画化という点では『ゲームセンターCX THE MOVIE 1986 マイティボンジャック』(2月22日公開)にも驚かされた。元ネタはお笑いコンビ・よゐこの有野晋哉が懐かしの家庭用テレビゲームのクリアにひたすら挑戦する企画をメインとした、フジテレビCS放送のバラエティ番組だ。10年も続く人気番組で、24時間生放送などとんでも企画もやってきただけに、劇場版もさもありなんと言ったところではあるが。ドラマ仕立てだと聞くが、下手にいじって興ざめさせたり間延びさせたりしていないことを望む。有野課長が真摯にゲーム攻略に立ち向かう姿、それだけでドラマティックで感動的なのだから。
なんだかオタク映画に目がいってしまいがちだが、そればかりじゃない。『サイドウェイ』のアレクサンダー・ペイン監督が手がけた、父と息子が絆を取り戻す人間ドラマ『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2月28日公開)や、ベン・スティラー監督・主演で名作『虹を掴む男』をリメイクした『LIFE!』(3月19日公開)にも期待したい。と、言いつつ、レディー・ガガも出演するロバート・ロドリゲス監督の『マチェーテ・キルズ』(3月公開)は……とついついオタク系が気になってしまう。もう性分だから仕方がない、と諦めるしかないか。(文:入江奈々/ライター)
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