「テイク・オン・ミー」の栄光と葛藤、a-haの3人がいま語る濃密な関係が興味深い
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80年代後半を象徴するポップスターの軌跡、『a-ha THE MOVIE』
【週末シネマ】実写映像をトレースしたアニメのミュージックビデオと曲そのものの素晴らしさで80年代を代表するポップソングである「テイク・オン・ミー」。1985年の大ヒットで一躍世界的なアイドルになったノルウェーのポップグループ「a-ha」の3人の軌跡を追ったドキュメンタリーが作られた。
グループ結成から今年で40年を迎える彼らは解散と再結成を経て、今も現役で活動を続けている。本作は彼らと同郷の映画監督トマス・ロブサームとアスラーグ・ホルムの共同監督作で、2016年からグループに密着して撮影が始まった。現在の姿と合わせて、3人の少年時代からグループ結成の経緯から全盛期の知られざる実情なども追っていく。
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80年代後半に大ヒットした数曲を知っている程度で、ボーカルのモートン・ハルケット以外は名前もはっきり覚えていない筆者にとってa-haといえば、ポップであると同時に微かな哀愁もあるメロディとモートンの美しい声、音楽誌を飾っていた80年代特有のアイドル的なグラビアの数々の印象が強い。
それゆえに、モートンが人気者の役割を一手に引き受ける裏側で、アイドル・グループ扱いされてミュージシャンとしての葛藤を抱えて苦しむ3人のパワーバランス、三者三様の性格の違いといったものが浮き彫りになる本作は、10代から40年以上をかけて、濃密な関係が築き上げられていった人間ドキュメンタリーとしても興味深く見た。
メンバー個別インタビューで語られるストレートな言葉
昨年カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞し、7月1日から日本公開される『わたしは最悪。』のプロデューサーでもあるロブサーム監督は、3人の私生活については極力省き、a-haの歴史にフォーカスすることでメンバーたちの人となりを語る。
ギターのポール・ワークター=サヴォイの完璧主義とプライドの高さ、強い音楽愛、彼と幼馴染だったキーボードのマグネ・フルホルメンが思いがけず訪れたスターダムやグループ内の人間関係にストレスを抱えていった過程、現在も体型を保ち、往年と変わらない美声を維持するモートンの徹底したプロ意識など、映し出される3人の発言も行動も驚くほど率直だ。個別にインタビューを受けているということもあり、相手を肯定するときも否定するときも全く飾らずにストレートに核心をつく。
1987年の『007/リビング・デイライツ』の主題歌を担当し、レコーディング中に同作の音楽を手がけた作曲家のジョン・バリーとの衝突、U2のような方向性を目指そうとしたが、彼らのような信念を持っていなかったことでうまくいかなかったことなど、3人それぞれが自分たちの物語を客観的に語っている。
間違いなくa-haの代名詞である「テイク・オン・ミー」という1曲が、その誕生から現在に至るまで変化し続けてきたことも印象的に伝える構成にもなっている。a-haのファンならば必見、80年代当時を知る人ならば、あの時代の狂熱の背景を解読する面白さを味わえるはずだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『a-ha THE MOVIE』は、2022年5月20日より全国公開。
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