【イタリア、映画探索】国内移動にパスポート持参!? 南北で別の国のように気質が違う
ヴィスコンティ、パゾリーニ、フェリーニなど、多くの巨匠が名を連ねる、イタリア映画のクラシックはたくさんありますが、ラテン系のノリだけではない、意外と知らされていないリアルなイタリアの姿。長年イタリアに滞在して映画製作を続けてきた筆者が、近年日本で公開されているイタリア映画を紹介しつつ、『ゴッドファーザー』のロケ地やテーマなどから、イタリアの南北関係、メンタリティ、文化、社会背景などを読み解いていきます。
・【イタリア、映画探索】いかにもイタリア!な風景を堪能できるシチリアの魅力
世界中どこへいっても地域差はありますが、イタリアにももちろん北と南での差異というものがあります。北は経済や産業の中心地で、北で稼いで南を食べさせているというような南北観もあって、「南北で国を分けたらいいんじゃないか」などと、お互いを軽蔑しているようなところがあります。
元々イタリアは都市国家が統一して一つの国となったところもあって、「オラが町」的な郷土愛が根付いています。郷土愛主義とも言える「カンパニリズモ」という言葉も存在するくらいです。
一般的にイタリア人と言うと、太陽が降り注ぐ海で、明るく陽気で歌って食べて恋して、等というイメージがあるでしょう。人それぞれではあるものの、これは大概、南イタリアのイメージで、北はこのイメージからかなり外れます。
北イタリアだと、天候の影響もあり、場所によっては霧が多く曇天が続くことがあります。北欧のように鬱々とした気持ちになるのか、閉鎖的な人も多いようで、地域の外の人との関わり、特に外国人などとは関わりを持とうとしないようなところもあります。
南の人から北を見ると、まるでドイツ人のように物事を実直に、事細かに誤りなく遂行するような、機械的なイメージもあるのです。生真面目な日本人としては、住む上でメンタリティとしては、北の方が相性がいいようです。そんな北と南のメンタリティの違いを描いた映画が『Benvenuti al Sud(南イタリアへようこそ)』『Benvenuti al Nord(北イタリアへようこそ)』。
いい意味でも悪い意味でも典型的なイタリアの南北の姿を、イタリア人自身が面白おかしく描いた作品です。日本で紹介されているイタリア映画は、社会派ドラマやホラーなどが多いかもしれませんが、映画でもテレビでもこの映画のようなコメディタッチのものが結構多かったりします。
映画は郵便局の職員の男が北から南へ、南から北へと転勤する物語です。マフィアの多い南へ行くのに防弾チョッキを羽織ったり、霧の多いミラノへ行くのにライトのついたジャケットをプレゼントしたり、同じ国なのにパスポートを持参したり……。
北の郵便局で日本化プロジェクトがあるのですが、日本のように対応キッチリ時間にもキッチリ。寸分の狂いもなくすべてが完璧に滞りなく進む──その様子をオーバーなくらいに滑稽に描いていきます。
食事の予定を決めるにも、そのとき次第で話しをしながら来る人を待つような南に対して、携帯電話とスケジュール帳を照らし合わせて、何時何分と厳密に打ち合わせる北の人々。──地域によるカルチャーの差違はどの国でも永遠のテーマと言えるのかもしれません。(文・写真:池田剛/イタリア滞在歴11年、映画製作者)
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