2月下旬〜3月公開作の興行成績の1位は『アナと雪の女王』の30億円。米国では昨年11月下旬から公開され、あげた興収は約4億ドル。ディズニーアニメとしては『ライオン・キング』の4億2280万ドル(3D版の興収を含む)に次ぐ歴代2位の大ヒットだ。世界的には10億7000万ドルを超え、『トイ・ストーリー3』を上回ってアニメ史上歴代1位を記録している。ヒロインを主人公にし、ミュージカル・ナンバーの数々が映画を盛り上げる伝統的なディズニーアニメで、11年春公開の『塔の上のラプンツェル』(最終興収25.6億円)と同じタイプ。映画関係者の間では「『ラプンツェル』並みのヒットは確実。どこまで興行成績を伸ばすか楽しみ」との声が多かった。
蓋を開けてみれば、『ラプンツェル』を大幅に上回る記録的な大ヒットスタートを切った。3月14日(金)から公開され、10日間で興収30億円を突破。『トイ・ストーリー2』(最終興収108億円)や『ファインディング・ニモ』(110億円)よりも早いペースだ。配給元のディズニーでは「100億円突破も確実視されている」と発表した。
近年の洋画大作は日米同時公開が多いなか、ディズニーでは米国公開から日本公開まで4ヵ月間を空けてじっくり宣伝してきた。全国5都市(東京、札幌、名古屋、大阪、福岡)で『アナと歌の女王』コンテストを開催。各地区2名の優秀者が、日本版主題歌を歌うMay J.と一緒に歌うことができるキャンペーンで、各都市での宣伝を盛り上げた。主役の姉妹は歌う場面が多いため、日本語吹き替え版には、数々のミュージカルで実績のある松たか子と神田沙也加を起用。ネットに歌う場面をアップして話題性を広げた。
一方、映画館では、約4分間の主題歌「Let it Go」が流れる本編部分を予告編代わりに上映。ディズニーによると、上映されたスクリーンで見た観客総数は述べ約1000万人に達するという。
また、公開直前から直後にかけてはテレビ特番を放映。東京ではテレビ東京、関西圏では読売テレビ、そして地方局で放映。TBS系で『塔の上のラプンツェル』を放送した際には、『アナ』の約7分間の本編特別映像を合わせて放送した。また、公開直前に発表されたアカデミー賞では長編アニメーション賞と主題歌賞を受賞したことで、公開への勢いがついた。公開中もテレビCMを流して動員を後押しし、息の長いロングランヒットとなっている。
2位は『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』の17億円。主題歌をKis-My-Ft2が歌ったり、小栗旬や夏目三久、お笑い芸人COWCOWがゲスト声優で出演する話題性がPRにつながった。例年通りの大ヒットだが、公開後16日間で興収17億円は前作(39.8億円)と比べて85%。家族客を『アナ』にやや食われているようだ。
3位は『ホビット 竜に奪われた王国』の12億円で、前作(17億円)と比べて92%の興収。3部作の2作目は興収が大きく落ち込むことが多いが、落ちの少ない興行となっている。前作は正月公開で日米同時となったが、今作は春公開。米国公開から時期を空け、じっくり宣伝したことが奏功したようだ。
なお昨年末よりヒットし続けている『永遠の0』は興収85億円を超えた。近年の邦画大ヒット作では、『THE LAST MESSAGE 海猿』(10年)80.4億円、『HERO』(07年)81.5億円、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)85億円で、それらを上回り、『ROOKIES 卒業』(09年)85.5億円まであと少しと迫っている。(文:相良智弘/フリーライター)
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