『流浪の月』も『美しい彼』も凪良ゆうが原作! BL小説で培ったベストセラー作家の手腕
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生きづらさを抱えた登場人物たちの心情表現に長けた作家
公開中の広瀬すず&松坂桃李のダブル主演による『流浪の月』の原作は、凪良ゆうが手掛ける同名小説だ。2020年の本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位にも輝いた。本書は、9歳のときに誘拐事件の“被害女児”となり、世間に名前を知られることになった家内更紗(かないさらさ)と、“加害者”である当時19歳の大学生・佐伯文(さえきふみ)の再会を描いている。わかりやすい恋愛関係としていないところが興味深い。他者には理解されない孤独な魂の触れ合いが見て取れて胸を締め付けられる。
・“誘拐犯”と“被害女児”となった2人の孤独な魂を活写する『流浪の月』
凪良の作品では世間と相容れず疎外感を覚える登場人物が自分なりの生き方を見出して一生懸命に模索する姿を追うものが多い。生きづらい思いを抱えていて決して生きて行くのが上手いとは言えないキャラクターたちだが、凪良の心情表現がうまく、自分とは異なる境遇であっても共感してしまう。
BL小説『あいのはなし』から『流浪の月』へ
その吸引力は大きく、凪良の手腕はBL小説で培ってきたといっても過言じゃないだろう。2017年に一般小説の『神さまのビオトープ』を発表し、その後『流浪の月』や『わたしの美しい庭』、『滅びの前のシャングリラ』と一気に注目度が高まってきた凪良だが、これまで数多くのBL小説を発表してきた。
凪良は2006年に中編の『恋するエゴイスト』が『小説花丸』に掲載され、2007年に長編の『花嫁はマリッジブルー』で本格的にデビューし、その後コンスタントにBL小説を上梓している。そのなかのひとつ『あいのはなし』は凪良が『流浪の月』を書くきっかけとなったBL小説だ。
男子高校生の恋を描いた『美しい彼』、ドラマ化が大ヒット
代表作を挙げるとなると、『セキュリティ・ブランケット』や『薔薇色じゃない』『おやすみなさい、また明日』などなど、それぞれ人気が高くて絞れないが、ここへきて凪良ゆうの代表作と呼ぶのにふさわしいと言えるほど話題になったのが『美しい彼』だ。萩原利久&八木勇征(FANTASTICS from EXILE TRIBE)のダブル主演でドラマシリーズ化され、第16回ギャラクシー賞「マイベストTV賞」でグランプリを受賞するほど多くのファンに支持された。
『美しい彼』も幼い頃から周囲になじめない吃音症の高校生・平良(ひら)一成と、学校カーストの頂点に君臨しながらも心に孤独を抱えている清居奏を描いている。こちらもやはり孤独な魂の触れ合いが切なくてもどかしく、心を捉えて話さない作品だ。『美しい彼』の原作はシリーズ化されていて、徐々に平良の変態ぶり(褒めてる)がパワーアップし、清居の相変わらずな振り回され具合と不覚にも慣れていく様子が笑えてラブコメ要素も加わりつつグッとくる核の部分は変わらない安定感がある。
一般小説も素晴らしいが、まだまだBL小説も書いてほしい!
ドラマシリーズの続編が映画化されることも決定していて、今後もまだまだファンに楽しみを与えてくれそうだ。ちなみに北野仁によるコミカライズの単行本が6月24日に発売予定となっている。BLファンとしては、BL小説家が一般小説でも注目されて人気が高まると我がことのように嬉しく思う反面、「もうBL小説を書かなくなってしまったらどうしよう…」という不安も出てくるものだが、凪良ゆうに関してはこれからもBL小説を書き続けてくれるはずだと信じている。どうかファンの期待に応えてくれますように。
BL小説から凪良のファンになった読者は凪良の一般小説も読む人が少なくないイメージだが、『流浪の月』など一般小説から凪良を知った人にもぜひ凪良のBL小説を読んで欲しい。どちらも変わらず生きづらさを抱えた者たちを見つめる目を感じ取ることができ、有意義な読書時間を過ごしてもらえることだろう。(文:牧島史佳/BLライター)
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