関西の大人気バラエティの放送作家・百田尚樹が原作『永遠の0』
2013年12月に封切られてロングランヒットを続ける『永遠の0』が興収86億円をついに突破(4月6日時点)。04年公開の『世界の中心で、愛をさけぶ』を抜いて、東宝の企画作品として歴代1位を記録した。
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本作は百田尚樹の同名小説を『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴が監督・脚本・VFXを手がけて映画化した戦争ドラマだ。主人公は04年現在26歳で司法試験浪人という名のもとに無為な生活を送る青年・健太郎。フリーライターの姉・慶子の手伝いで若くして戦死した実の祖父・宮部久蔵について調べ、戦争で宮部に関わった存命者たちを訪ね歩いて話を聞くこととなる。健太郎たちは、特攻隊員でありながら“海軍航空隊一の臆病者”と言われるほど命を惜しむ男だった実祖父・宮部の素顔を追い、それと共に特攻隊をはじめとした戦争の真実に迫っていく。映画版は戦争シーンがメインで国のために命を捧げる青年隊員たちの姿が涙を誘い、幅広い層の観客の感動を呼んでここまで大ヒットを放ったのであろう。
ところで話は変わるが、深夜番組にも関わらず視聴率30%を超えることもしばしば、関西人で知らない人はいない、関西が誇る人気長寿番組をご存知だろうか? それは『探偵!ナイトスクープ』だ! 視聴者から寄せられた依頼をもとに探偵局員と称される関西ローカル色の強いタレントたちが調査を行うバラエティである。調査内容は多岐に渡るが、愚にもつかないものも多くバカバカしければバカバカしいほど一生懸命に調査するさまが滑稽で面白く、なかには思わぬ人情路線に発展してスタジオを涙で包むこともある。関西出身の私としては関西人の大好物なのが大いに頷ける番組だ。
この『探偵!ナイトスクープ』の放送作家を25年以上に渡ってつとめているのが「永遠の0」で作家としてデビューした百田尚樹だ。百田は小説家としてのデビュー当初を振り返り、放送作家である彼がさまざまな出版社に原稿を持ち込んでも相手にさえしてもらえなかったと言っている。今や押しも押されもせぬメガセラー作家となり、相手にしなかった出版社はさぞかしほぞをかんでいることだろう。
小説家としてデビュー後、百田は「ボックス!」「モンスター」「海賊とよばれた男」などなど、多数のベストセラーを生み出してきた。しかも、たいていの作家はミステリーであったり歴史ものであったり、それぞれ得意なジャンルが決まっている。しかし、百田は戦争ものであったり青春ものであったり歴史ものであったり、それこそ多岐に渡っている。百田は1つのジャンルでしか作品を書かない多くの作家のことを“才能がないから(笑)”と言うが、そう言っても許されるほどバラエティに富んだジャンルを書くことができ、彼が根っからのエンターテイナーであることを物語っている。
そんな百田による「永遠の0」は、ストーリーテリングもうまく、ミステリー仕立てで物語を引っ張っていき、感動的なエンターテイメントとなっている。なんといっても軍人をヒーローにしながら、矛盾することなく反戦の形をとっているのは面白い発想だ。宮田久蔵はスゴ腕の零戦パイロットであるが、戦場の成果よりも何よりも家族のために命を大切にし、そのことを周囲に教え、彼がヒーローであればあるほど、多くの命を奪う戦争の非情さを訴えることになるのだ。中編・後編へ続く(文:入江奈々/ライター)
『永遠の0』は全国公開中。
・【元ネタ比較!】『永遠の0』中編はこちら/原作者の意図は反映されているのか?
・【元ネタ比較!】『永遠の0』後編はこちら/感動を打ち消すラストにわずかな希望の光が!?
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