『ウィッカーマン final cut』国内再最終上映
『ミッドサマー』や米津玄師のMVにも影響を与えたとされるロビン・ハーディー監督『ウィッカーマン final cut』の国内最終上映が、新宿 K’s cinemaで7月23日〜7月29日、京都みなみ会館では『ミッドサマー』と共に6月17日〜23日に行われる。このたび場面写真と共に映画評論家の滝本誠の推薦文も公開された。
滝本は、パンフレットに書き忘れたポイントについてコメントを寄せた。
まずはもっとも異様、不気味な、人の手のロウソクについて。
「これは<栄光の手>と呼ばれ、刑死者の<手>を切り落としての再利用備品といっていいが、成り立ちには諸説あり。ともかく、芯は人間の髪、脂は黒猫のそれとかと、伝説の怪奇性は例のごとく申し分ない。これらは魔力の象徴であり、結局のところ魔女パワーに結び付けられてきた。警部の運命=ニンゲン・ロウソクを予告するかのよ うでもある。それにしても、メイ・ディ前夜は、夜ひらく、夜がわるい、夜のせい……艶歌のごとく、セックス出し入れ大解禁のWOW WORLDが展開する」
続いて、野外パフォーマンスのひとつ、ストーンヘンジ(環状列石)跡で行われるシークレット・セレモニー(受胎秘儀)について。
「列柱の間から差し込む陽光が中心の円い石盤を刺しつらぬき、と書けば意味するところは想像通りで、薄いベールの女性たちが美しくエロい。<グリーンマン>は、自然をつかさどる神霊だが、グリーン (緑)の魔術空間の最たるものは森である。日常との隔絶空間として、森は恐怖と一体化した解放と官能の空間である。アーサー・マッケンの『セレモニー』は、森に入ってゆく少女のとある秘密の儀式を描いた短編小説であるが、これを読むとその言葉は使われていないとしても<グリーンマン>の偏在、少女の変容への魔法まぶしがリアルに感受できる、そんなおそろしい作品。こうした官能誘惑力の<グリーンマン>の名前を大衆酒場に与えるあたり、監督ロビン・ハーディ&脚本家アンソニー・シューファーは冴えわたっている」
そして最後に、米津のMVについてコメントする。
「ちなみに、巨大なヒトガタの木造構造物=ウィッカーマンをわが国に存在させ、燃え上がらせたのが、音楽家・米津玄師の初期作品『Wooden Doll』
出生不遇のカルト作が40年を経て復活
本作品は、ある島で少女が行方不明になったと書かれた匿名の手紙を手がかりに捜査にとりかかったハウイー警部が神話の儀式に巻き込まれるさまを描く。『ミッドサマー』のアリ・アスター監督もその影響を公言するなど、一部では熱狂的に支持されてきたカルト作だ。
警部は島に上陸し捜査に取り掛かるが、島民たちは誰もその少女を知らないと言い張り、少女の母親までが娘の存在を否定する。早速、翌日から本格的な聞き込み調査を開始するが、怪しげな出来事ばかりが起こる中で、この異教ケルトの神々を信仰する島の人々を統治するのが、サマーアイル卿であることが分かり屋敷を訪れる。しかしそれは狂乱と神話の儀式にハウイーが巻き込まれる幕開けだった……。
本作品は、完成した1973年当時、映画会社ブリティッシュ・ライオンのトップが気に入らず、宣伝告知などを一切せずにニコラス・ローグ監督『赤い影』とあわせて公開。しかもそれは、ロビン・ハーディー監督が編集した102分バージョンでなく88分の短縮版だった。ネガフィルムも紛失し、長らく行方 不明の状態が続いていたが、40周年記念となる2013年にフィルムが見つかり、監督自らが再編集をした94分のバージョンが今回のfinal cut版だ。
『ウィッカーマン final cut』は、新宿 K’s cinemaで7月23日〜7月29日、京都みなみ会館では『ミッドサマー』と共に6月17日〜23日に上映される。
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