『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS
『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS

首都一極集中ではない多様なぺルー文化を後世に伝えていく役割果たす

映画『マタインディオス、聖なる村』(6月18日からシアター・イメージフォーラムで公開)と『アンデス、ふたりぼっち』(7月30日から新宿K’s cinemaで公開)の2本のペルー映画の秀作が同時期に公開される。

その2作品に共通するのは、ペルー独特の「シネ・レヒオナル(地域映画)」という地域に根ざした映画作り。この独自の映画手法とは、いったいどういうものなのか……。

ペルーのシネ・レヒオナル(地域映画)とは?

「シネ・レヒオナル」とは、ペルーの首都・リマ以外の地域で、その地域を拠点とする映画作家やプロダクションによって製作される映画を指す。

娯楽的なジャンル映画から作家性の強いアート映画までタイプは様々だが、いずれの作品もその地域独自の文化や習慣を織り込んでおり、都市圏一極集中ではない多元的なぺルー映画を構成している。

こうしたジャンルが成立する背景には、ラテンアメリカ各国が共通して抱える問題がある。その国の首都圏への人口や経済、文化の一極集中である。

職を求めて国中から人々が首都に押し寄せると、それに伴って文化も都会を中心に発達する。

そうすると、映画館やプロダクションも都市部に集中し、国内で作られる作品の大半は、主要なターゲット=首都圏の人々や文化に合わせたものになる。

こうした都市部による映画文化の占有に対抗して現れたのが、「地域映画」という概念だ。

国内の様々な地域で、そこに生きる人々がその土地ならではの視点から映画を作ること。日本でいう「ご当地映画」に近いかもしれないが、担い手の少ない先住民の言語や文化が数多く存在しているラテンアメリカの国々において、そうした文化を映画という形で伝えていくことが大きな課題となっている。

今回、公開される2作品も、こうしたテーマに沿った作品となっている。

あそこから神が見ている、この村を守るために……

■『マタインディオス、聖なる村』(原題『MATAINDIOS』)

『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL

『マタインディオス、聖なる村』(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL

作品の舞台は、ペルーの山岳部。4人の村人が、村の信仰を司る守護聖人を称える祭礼を計画する。聖人を喜ばせることで、長年の喪を終わらせてくれると信じていた。

しかし、予期せぬ出来事により、自身の信仰と、聖人による庇護の力に疑問を抱く……。

監督と脚本は、同作が初長編作品となるオスカル・サンチェス・サルダニャとロベルト・フルカ・モッタ。

16年、ペルー文化庁が管轄するDAFO(Direcciíon Audiovisuali,la Fonografía y los Nuevos Medios)シネ・レヒオナル映画コンクールに入賞。第22回リマ映画祭に出品され、18年のベストペルー映画に選ばれた。

その地域に暮らす民衆によって描かれた村を描き、慣習と価値観にリアリティを呼ぶシネ・レヒオナルの真髄とも呼べる作品が日本初公開される。

撮影は、オスカル・サンチェス監督の故郷である、リマ県山岳部のワンガスカルで行われた。司祭役の俳優以外は、ワンガスカルに暮らす村人たちが演じている。

監督たちは村人たちと共に過し、対話したり、笑ったり、不満を言い合ったり、お酒を飲んだり、時には亡くなった方の埋葬にも参加しながら信頼関係を築いていった。

そのため、ペルー山岳部の慣習とカトリック信仰が入り混じった価値観がありありと描き出され、ドキュメンタリー性を内包した物語となった。

さらに、ハンガリーの巨匠タル・ベーラに影響を受けたと監督が公言する、モノクロ風の映像が民衆の苦悩と困惑を詩的に語る効果を生んでいる。

『マタインディオス、聖なる村』ポスタービジュアル(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL

『マタインディオス、聖なる村』ポスタービジュアル(C)LA TROPILLA DE OBRAJEROS EIRL

老夫婦の厳しくもたくましく生きる愛の物語 その行き着く先は……

■『アンデス、ふたりぼっち』(原題『WIÑAYPACHA』/英題『ETERNITY』)

『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS

『アンデス、ふたりぼっち』(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS

作品の舞台は、南米・アンデス山脈。標高5000mを越える社会から遠く離れた場所に暮らすパクシとウィルカ。アイマラ文化の伝統的な生活の中で、リャマと羊と暮らしていた。コカの葉を噛み、日々の糧を母なる大地のパチャママに祈る。

ある日、飼っていた羊が狐に襲われてしまう。さらに、マッチを買いにいった夫・ウィルカはその途中に倒れてしまう。そして都会に出た息子の帰りを待つふたりにやがて訪れる、心を震わせる衝撃のラストシーンを迎える。

同作は、小津安二郎や黒澤明の日本映画に大きな影響を受けたものの、34歳で夭折した、オスカル・カタコラ監督初長編作品にして遺作だ。

ペルー映画史上初の全編アイマラ語長編作品として注目され、ペルー本国で異例の大ヒットとなった。ウィルカ役は監督の実の祖父が、パクシ役は映画も見たことのない素人が演じている。

ペルー南部プーノ県出身のカタコラ監督は同作で、アイマラの文化・風習の中に、人々が存在を知りながらも目を背けていた現実を、悠大なアンデスの自然と共に痛烈に描いた。

シネ・レヒオナルの旗手として今後の活躍を期待されていた中、21年11月、2作目の撮影中に34歳の若さでこの世を去ってしまい、同作が長編初作品であると同時に遺作となってしまった。

6月18日から『マタインディオス、聖なる村』を上映するシアターイメージ・フォーラムと、7月30日から『アンデス、ふたりぼっち』を上映する新宿K’s cinemaでは、相互割引を実施する。

『アンデス、ふたりぼっち』ポスタービジュアル(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS

『アンデス、ふたりぼっち』ポスタービジュアル(C)2017 CINE AYMARA STUDIOS

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