2012年4月に公開され、社会現象と言えるほど大ヒットした『テルマエ・ロマエ』。続編を期待させるラストから2年、このほど続編『テルマエ・ロマエII』が公開される。
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入浴が盛んであった古代ローマの浴場設計技師・ルシウスが現代の日本にタイムスリップ。日本の風呂にカルチャーショックを受けて、彼が独自に解釈した多分に勘違いも含む情報を古代ローマで生かす。このシリーズはヤマザキマリによる奇想天外なファンタジックコメディの大人気漫画が原作だ。今回もルシウスは現代日本にやってきて、前作で出会った日本人女性・真実と再会し、風呂はもちろん相撲という文化にも触れてまたまた驚愕する。
原作者のヤマザキマリは17歳のときに単身でイタリアに渡り、その後さまざまな人生経験をしてきた女性で、漫画家としてはエッセー漫画が出発点。イタリア人の夫とその家族との生活を綴った「モーレツ!イタリア家族」などの単行本も多数出している。この夫が古代ローマに造詣が深く、「テルマエ・ロマエ」執筆にはその影響もかなりあるようだ。
原作は線が細く悪く言えばハッキリしない画調だが、繊細でいかにも女性らしいタッチ。もともと発想は面白いが、発展性はそれほどない。漫画はヒットすると編集者にせがまれて連載を引き伸ばされることがよくあるが、単行本全6巻で終わっている。私としては6巻でもやや長いのではと感じた。
しかし、ただ古代ローマ人が現代日本の風呂に感銘を受けるというだけでなく、古代ローマ帝国の統合をかけた時代背景も描かれ、そこにルシウスが浴場設計士として絡むからこそ面白いのである。格調高く真面目だからこその笑いがあり、ギャグというより品のあるパロディといった感覚だ。単行本の表紙がミロのヴィーナスにドライヤーを持たせるなど、有名な彫刻に風呂モチーフを付け加えたパロディ画になっていることからもその雰囲気を感じ取ってもらえるだろう。
しかしながら、映画版はどうも品がなく悪ふざけが過ぎる感が否めない。ルシウス役の阿部寛をはじめ古代ローマ人を日本人が演じる、“逆転の発想”的なキャスティングは原作の持つパロディ感覚を踏襲した素晴らしいアイデアだと思う。ただ、いまだに猛獣に襲われた事件をいじられる松島トモ子や『てなもんや三度笠』の白木みのるを出演させるだけで笑いを取ろうとする貪欲さには白けてしまう。お風呂にはつきもののマッサージチェアや入浴剤などは原作に出てきてもおかしくないエピソードなのだから、そういった笑いだけを追求すればいいのに。
それに、なんでこんなに学芸会的ムードなんだろう? ベタな笑いを狙うからか。テレビドラマ畑出身で『のだめカンタービレ』シリーズの武内英樹監督のクセなのだろうか。演技か、大げさな演出か、間の抜けた間合いのせいか──。老若男女、万人にわかりやすく馴染みやすくするためには、避けられない道なのだろうか。
まぁ、そんなに眉間に皺を寄せて分析するタイプの作品ではないのだが。それこそ家族揃ってGWに出かけるのにはもってこいのエンターテイメントだろう。私も温泉施設のリクライニングチェアにもたれてリラックス気分で見たのなら満足できたかもしれない。(文:入江奈々/ライター)
『テルマエ・ロマエII』は4月26日より全国公開される
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