112億円の大ヒット『アナと雪の女王』、その人気が示す日本人の国民性とは?
ディズニーアニメーション『アナと雪の女王』の快進撃が続いている。3月14日に公開され、4月24日までで観客動員数は902万5062人、興行収入は111億5866万1700円を突破。これまで洋画アニメの歴代最高だった『ファインディング・ニモ』(110億円)を上回り、新記録を樹立した。
『アナ』は口コミ型ロングランヒットだ。週末興行収入は1週目より2週目の方が上回り、その後も落ちの少ない興行を展開している。
『アナと雪の女王』大ヒットの背景には、日本人の国民性と関連した2つのポイントがある。
1つめが「ディズニー&ピクサーアニメの日本人気」。日本ではスタジオジブリアニメの人気に加え、毎年『ドラえもん』『名探偵コナン』『クレヨンしんちゃん』そして『ポケモン』が公開されるため、洋画アニメはヒットしづらいのが実情だ。
『シュレック』シリーズのドリームワークスアニメや、『アイス・エイジ』シリーズの20世紀フォックスアニメーションは日本市場で苦戦を強いられ、最近では『クルードさんちのはじめての冒険』『ターボ』(ドリームワークス)、『アイス・エイジ4/パイレーツ大冒険』(20世紀フォックス)が劇場未公開でDVDリリースのみとなっているほど。
そんななか、日本でも安定した人気を誇るのがディズニー&ピクサーアニメだ。公開される作品の大半がヒットしており、例えば昨年は『モンスターズ・ユニバーシティ』が興収89.6億円(洋画1位)、『シュガー・ラッシュ』が30億円(4位)を記録している。他社の洋画アニメでは「コミカルさ」が前面に出る作品もあるが、ディズニー&ピクサーは「感動」が基本。泣ける作品がヒットしやすい日本市場に合った内容で、日本人の観客も共感しやすい。東京ディズニーランドとディズニーシーの人気がディズニーブランドを支えているのはいうまでもない。
もう1つが「ミュージカル映画の日本人気」。昨年『レ・ミゼラブル』が58.9億円(2位)の大ヒットとなったのは記憶に新しいが、ミュージカル映画は日本で人気だ。『シカゴ』(35億円)、『オペラ座の怪人』(42億円)、『マンマ・ミーア!』(26億円)。不振の作品も多いが、『レ・ミゼラブル』のように感動の要素が加わるとヒットしやすい傾向がある。
ミュージカル・ナンバーの数々が映画を盛り上げるのはディズニーアニメの伝統。『白雪姫』『シンデレラ』『ふしぎの国のアリス』など名作揃いだが、往年の名作は家族向けが中心。『アナ』のように若い女性も引き付けた走りが、『美女と野獣』だろう。1992年秋に日本で公開され、家族客のほか若い女性も見るデートムービーとして人気となり、当時、配給収入16億円の大ヒットを記録した。
翌93年には『アラジン』(配収25億円)、94年には『ライオン・キング』(配収20億円)が公開され大ヒット。『美女と野獣』と『ライオン・キング』は劇団四季のミュージカルとして生まれ変わり、ロングラン上演される人気ぶりだ。『美女と野獣』公開から22年。当時20代で「ディズニーミュージカル」の洗礼を受けた女性は40代となり、家族と一緒に『アナ』を見ていると思われる。
『アナ』の場合、吹替え版の素晴らしさも人気の秘密だ。日本語版キャストはミュージカル女優としてのキャリアと実績のある松たか子(姉のエルサ)と神田沙也加(妹のエルサ)が担当。字幕版と吹替え版の両方を見るリピーターを増やしている。
4月26日からは新たに「3D吹き替え版」「みんなで歌おう歌詞付版(2D字幕・吹き替え)」がスタートする。洋画の歴代興行収入トップ5は、1位『タイタニック』262億円、2位『ハリー・ポッターと賢者の石』203億円、3位『ハリー・ポッターと秘密の部屋』175億円、4位『アバター』156億円、5位『ラストサムライ』137億円。『アナ』は何位に食い込むことができるだろうか。(文:相良智弘/フリーライター)
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