倍賞千恵子「自分で自分の命を粗末にしちゃいけない」命の選別に警鐘鳴らす『PLAN75』を早川千絵監督と語る

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75回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門でカメラドール特別表彰に輝いた、倍賞千恵子主演『PLAN 75』が617日より全国公開される。ムビコレでは、早川千絵監督と倍賞千恵子のインタビューを掲載中だ。

・カンヌで新人賞受賞/『PLAN 75』早川千絵監督×倍賞千恵子インタビュー

着想のきっかけは2016年夏に起きた障害者施設での事件

本作は、超高齢化社会に対応すべく75歳以上が自ら生死を選択できる制度“プラン75”が施行され、その制度に大きく翻弄される人々の姿を描いた衝撃作

早川監督は「2016年夏に相模原の障害者施設で事件が起きました。ものすごい衝撃を受けると同時に、こういう社会で起こるべくして起こった事件ではないかと思い、『プラン75』という設定を思いつきました」と本作の出発点について語る。

10年間ニューヨークに住んでいた早川監督。2008年に帰国後、どんどん生きづらい社会になっていると感じる中で起きた衝撃的な事件に、「こういうことが本当に日本で起きてしまうかもしれない」と危惧したことが着想のきっかけだった。

本作の主人公は、勤勉に慎ましく生きてきたが、失職をきっかけに“プラン75”の申請を検討し始める角谷ミチ。早川監督が「『かわいそうだな』と同情するのではなくて、見ている人が感情移入して『この人に生きてほしい』と自然に思えるような人間的な魅力がある主人公にしたい」と思ったとき真っ先に浮かんだのが、倍賞。

倍賞は、「脚本をいただいて、読み始めて最初は衝撃を受けましたが、読んでいくうちに、どんどん惹かれていって」と最初の印象を語る。たまたま生や死について考えていた時期、近所の住職に、死とは「生きること」と聞いて納得した倍賞。「ミチも自分がどう生きて、どう死ぬんだろうって考えながら生きていく人なんだろうなと思った」と話した。

勤勉で控えめで、思いやりも強い。そんなミチのキャラクターは、倍賞からにじみ出てくるものもあったと早川監督は語る。「職場のロッカーで荷物を整理する時に、きれいに拭いて『ありがとうございました』と言う場面がありますが、あれは私の演出ではなくて倍賞さんが自然にやられたことです」。

最初から意図していたわけではなく、「たまたまやってたら、そうなったのね」と倍賞。倍賞の演技や早川監督の指示、美術などが合わさり、繊細に表現されたキャラクターであることを語った。

最後に、「今、世の中でいろんなことが起きてるでしょう。人が人を殺しちゃいけない。戦争は絶対いけないと思う。それはもちろんだけど、まず自分で自分の命を粗末にしちゃいけないと思う。死があるんだったら、そこまではいただいた命を大切にちゃんと生きたほうがいいんじゃないかと私は思う」と倍賞。本作への出演で、その思いはより強固になったことを話した。

早川監督は、すぐに白黒はっきりつけようとする世の中に「警鐘を鳴らしたい気持ちがある」と語った上で、「簡単な解決策は分からないけれども、有無を言わずに、生きていることを肯定したい、人に生きてほしい。そんな願いを込めました」とメッセージを伝えた。早川千絵監督と倍賞千恵子のインタビュー全文はこちらから!