“見た目”でなく“オーラ”でものにし、山田孝之のアタリ役に
真鍋昌平原作のコミックを映像化した人気シリーズの映画化第2弾『闇金ウシジマくん Part2』が公開となる。社会の闇、心の闇を情け容赦なく描き、いや〜な気分にさせる作品ながら、主人公の闇金業者・丑嶋(うしじま)の複雑な魅力は大きな吸引力を持っている。
この丑嶋を演じるのは、もはや彼をおいて他にいない、山田孝之だ。今でこそ『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』でのインテリやくざ的な役どころも当然のキャスティングと思われがちだが、丑嶋役に抜擢された当初は、筆者としては不安も感じたし、芸能ニュースでも“山田孝之が新境地に挑む”と謳われた。しかし、山田孝之は見事に丑嶋役をものにし、彼の当たり役となった。
原作の丑嶋は、アゴ回りのヒゲにリムレス眼鏡は同じだが、ごつごつとしたジャガイモ顔に身長180㎝以上ありそうな大男で、どちらかといえば小柄な山田が演じるのは不利に感じるが、言葉少なく人を威圧するオーラで演技達者な山田らしい丑嶋像を作り上げている。
原作はかなりグロい内容も出てくるが、クールでハードボイルドなのが持ち味。原作者が同じ「スマグラー」もクールでハードボイルドな作品だが、映画版『スマグラー おまえの未来を運べ』では、石井克人監督がサディスティックな暴力描写を嬉々として描いた幼稚な作品だった。しかし、『ウシジマくん』シリーズは実写版もクールでハードボイルドな大人な作品。ちなみに、『ウシジマくん』シリーズのテレビドラマも映画版も企画・脚本・監督をつとめる山口雅俊が、映画版『スマグラー おまえの未来を運べ』でも企画・脚本を手掛けている。やはり映画は監督で決まるのだ。
そして、山田孝之演じる丑嶋もクールでハードボイルドで、どんなときでもポーカーフェイス。映画版1作まではそれをドヤ顔で演じ、アップで見せつけ、ややケレン味があって苦笑を誘っているように見えたが、本作を含む第2シーズンでは山田も演出も堂に入ったもので、さらりと流していてそれがまたカッコイイ。山田は全ての反射神経を押し殺すトレーニングでも積んだのか?と思うほど、目の前で何事が起こっても動じない異様なまでの根性の座りっぷりを見せる。それは冷徹で非常に頭が切れる丑嶋のキャラクターをよく表している。
丑嶋は冷徹で頭が切れ、ポーカーフェイスで仕事を淡々とこなしていく。そんな姿に胸がすくところも本作の魅力のひとつなのだ。これだけ頭の回転が速く、驚くほどの危機回避能力があれば、明日のわが身も知れぬ闇金業をやって危ない橋を渡らなくてももっといい仕事があるだろうに、と思うほど。かと言ってロボット的ではなく、1ミリだけ人情も垣間見れる。ケチャップをたっぷりかけたオムライスが好きであるとか、〈カウカウファイナンス〉の社員で昔馴染みの柄崎(えざき)とのやり取りにもそれが感じられる。この丑嶋くんの人間らしさにオフビートな感覚も作品を邪魔しない程度に漂っており、緊張感漲る本作のちょっとした息抜きにもなっている。
もう1人、丑嶋を人間らしく感じさせる重要なキャラクターが戌亥(いぬい)だ。彼は丑嶋のことを「社長」や「丑島」と呼ばず「丑嶋くん」と呼び、柄崎と同様の昔馴染みで、食うか食われるか敵ばかりの闇社会で丑嶋とは距離を持ちつつ友好的な情報屋だ。ちなみに彼は駄菓子好きの設定。この戌亥はプライベートでも山田孝之と親交のある綾野剛が演じ、ドラマ版のシーズン2からの登場で映画版2作目にも引き続き出ている。駄菓子屋の前で丑嶋と戌亥が情報交換のために会うシーンではたいてい駄菓子を食べたり、シャボン玉を吹いたり、フッと緩んだ空気を感じさせる。ただ、ポスターで綾野剛が大きく写っているからといっても出番の尺は少ないが。…後編へ続く(文:入江奈々/ライター)
『闇金ウシジマくん Part2』は5月16日より全国公開される。
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