鑑賞後は、街ゆく女性が皆、風俗嬢に見える!?
真鍋昌平原作のコミックを映像化した人気シリーズの映画化第2弾『闇金ウシジマくん Part2』が公開となる。2014年1月にテレビドラマのシーズン2が放送され、続けて見せることを念頭に置き、本作は製作された。と言ってもドラマ版とは直接的なつながりはなく、見ていなくても十分本作は楽しめる作りになっている。ドラマ版シーズン2では丑嶋、柄崎、高田ら〈カウカウファイナンス〉の内部の雲行きが怪しくなるが、映画版第2弾ではいつも通り確固たる信頼でつながっており、そこは安心して債務者たちのドラマにハラハラできる。初めて本シリーズを見る観客もぶれずに混乱せずに見ていられるハズだ。
・【元ネタ比較】『闇金ウシジマくん Part2』前編
・【元ネタ比較】『闇金ウシジマくん Part2』中編
もともと丑嶋たちは狂言回し的な存在で、債務者の救いようのない人生がメインに描かれ、とくに前作で描かれた「出会いカフェくん」編は、原作では実は丑嶋は狂言回しですらないほどの脇役。しかし、今回映画化された原作の「ヤンキーくん」編も「ホストくん」編もガッツリ〈カウカウファイナンス〉の面々が物語に絡み、「ホストくん」編は〈カウカウファイナンス〉の社員・高田の過去の話も描かれている。そこを持ち出してくるのかと思いきや、映画版2作目ではまったく別の人物のエピソードに塗り替えられ、やはり〈カウカウファイナンス〉のメンバーは狂言回しに徹しており、それはそれで1本の映画として見やすく整理されている。
映像版は原作とは違って、色々なエピソードを同時進行で描いていく。映画版は第2弾も133分と長く、ちょっと欲張って盛り込み過ぎた感もあり、見終わったときにはお腹いっぱいとなっている。それなのに、丑嶋たちという狂言回しの関係性がぶれては、混沌とした状況になっただろう。しかし、丑嶋たちは狂言回しの役割をわきまえつつ、クライマックスの見せ場も用意され、整理されていながらもスリリングに楽しめる。さまざまなエピソードや人物を組み合わせて再構築し、それでいて原作のエッセンスもしっかり残されているのだ。原作にも出てきた5円玉のモチーフも忘れちゃいない。
映画版オリジナルキャラクターも登場し、とくに高橋メアリージュン扮する犀原茜(さいはらあかね)に注目してほしい! 原作ではやくざの滑川に当たるポジションであり、丑嶋を過剰にライバル視している闇金経営者で、凄みある凶暴なオンナだ。ウィスパーボイスと怒号でメリハリをつけ、元「CanCam」のモデルにしては思いっきりのいい怪演を見せてくれる。
彼女のほかにも、“若手俳優名鑑”になっていると言いたいぐらい注目の俳優たちが演技でしのぎを削っている。『愛の渦』の門脇麦、『共喰い』の菅田将暉、ドラマ『花子とアン』の窪田正孝らが汚れたいい演技を見せる。中尾明慶は哀愁漂うチンケな族の総長で、共感を得にくい本作のなかで観客の心をつかむオイシイ役どころをもらっている。柳楽優弥はきっもちわっるいストーカー役が大ハマり! かねてから柳楽優弥はもっと気持ち悪い役をやればいいのにと思っていたから嬉しくなってしまったほどだ。若手だけでなく、キムラ緑子は、最近『ごちそうさん』を見ていた人はギャップに驚くかもしれない。
あとは、エンドロールの後にもオマケ付き。せっかくだから席を立たずに最後まで見よう。見終わった後はどっぷりとウシジマくんの世界に飲み込まれているハズだ。その昔、“任侠映画を見た男性が映画館を出てくるときにはすっかりその気になっている”という現象があったと聞くが、それがよくわかる。映画館を出ると、街を歩く普通の女の子たちが、「借金に追われて実は夜は風俗店で働いているのでは…!?」と思えてくるに違いない。(文:入江奈々/ライター)
『闇金ウシジマくん Part2』は5月16日より全国公開される
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