『スイートプールサイド』
“体毛の悩み”を真っ向から捉えた青春映画が誕生
青春は悶々だ。悶々としていなければ正しい青春とは言えない。この“悶々”のテーマはそれぞれだし、その時その時で、性に対してだったり、人間関係や自己の存在意義などさまざまだが、その問題を独りで抱えてもがき苦しんでこその“悶々”だ。時には友だちと語り合ったりもするが、核心には触れなかったり、あるいは言語化して話せるほど自分でも捉えきれていなかったりする。その結果、独りで悶々と、着地点なき時間を過ごすものである。
この青春の“悶々”を見ごとに描いたのが、青春変態漫画「惡の華」の人気漫画家・押見修造の初期の名作──2004年に「週刊ヤングマガジン」誌に連載された「スイートプールサイド」だ。ここで描かれる“悶々”の象徴は、思春期とは切っても切れないテーマ、ずばり“毛の悩み”である。
主人公の太田年彦は体毛が生えないことに悩む男の子。片やヒロインは、年彦と同じ水泳部に所属し、毛深いことに人知れず胸を痛めている女の子・後藤綾子。ある時、綾子が体毛を処理しようと苦戦してるところを垣間見てしまった年彦は、綾子に驚くべきことを頼まれる──「わたしの毛を、剃ってくれない?」と。そして、人目を忍んで会い、毛を剃り、剃られる奇妙な関係が始まる。
あくまで本人たちは大真面目で、真摯に“毛”に向き合い、エロくなるわけでもない微妙なラインで悶々としている姿が切なくてかわいらしく、見ている方はキュンキュンしてしまう。何かに対するコンプレックスは、誰もが抱え、通る道で、想い悩む姿に共感せずにはいられない。
そんな青春コミックが、青春映画を得意とする『アフロ田中』の松居大悟監督により映画化された。主演は『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで淳之介役を演じた須賀健太、ヒロインは『シャニダールの花』の刈谷友衣子で、惜しみない拍手を送りたいほどの好演を見せている。…中編に続く(文:入江奈々/ライター)
『スイートプールサイド』は6月14日より全国公開される。
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