中国が舞台になったり、中国人俳優が登場するハリウッド映画が増えている。昨年公開の『パシフィック・リム』では舞台の1つを香港として、中国製ロボット「クリムゾン・タイフーン」が登場した。『アイアンマン3』は、世界公開版とは別に中国公開版を作成し、中国人俳優ファン・ビンビンらが出演した。公開中の『X-MEN:フューチャー&パスト』には同じくファン・ビンビンが登場。テレポーテーション用の歪みを空間に作り、敵の攻撃を巧みにかわしたり、味方を逃がしたりと活躍を見せる。また中国が重要な舞台として登場する。8月公開の『トランスフォーマー/ロストエイジ』ではリー・ビンビンやハンギョンらが出演。こちらも中国が舞台として登場する。
・出演料の低下で製作しやすく…ハリウッドの老スター映画が増えるワケ
ハリウッド映画で中国描写が目立つのは、中国市場での売り上げ増進を狙ってのことだ。2012年、中国の映画市場は27億ドルを記録し、日本を抜いて世界で2位にランクアップ(1位は米国)。13年は33億ドルに伸びた(1ドル100円換算で3300億円。日本は1942億円)。急激な経済発展にともないシネコンが急増し、富裕層や中間層が大勢映画館に足を運んでいる。08年には6億3000万ドルだったので、過去5年間で5倍以上に拡大したことになる。
活気づく映画市場が生み出すチャイナマネーがハリウッドに流入する動きも相次いでいる。ドリームワークス・アニメーションは中国企業3社と合弁で製作会社オリエンタル・ドリームワークスを12年に上海に設立。CGアニメ『カンフー・パンダ3』の製作を進めているほか、中国語の実写映画も企画開発中だ。
ウォルト・ディズニーは『アイアンマン3』を中国のDMGエンタテインメントと共同製作。パラマウントは『トランスフォーマー/ロストエイジ』を中国企業2社と共同製作している。香港ディズニーランドには16年に『アイアンマン』のアトラクションがオープンする予定で、これは米国にもない世界初。今後もマーベルのアメコミヒーロー映画が作り続けられるので、中国でさらに人気を集めそうだ。
昨年、米シネコンチェーン2位のAMCエンタテンメントを買収した中国の複合企業ダリアン・ワンダ・グループは、青島に「中国版ハリウッド」を建設すると発表。82億ドルを投入して、20の映画・テレビスタジオや音響施設、アニメ製作所などを設置し、映画・テレビ作りの一大拠点を目指す。昨年9月下旬に行われた起工式には、レオネルド・ディカプリオやニコール・キッドマンらハリウッドスターや、トニー・レオンやチャン・ツィイーら中国人スターが数多く出席し、米中映画界の期待度の高さが表れた。
中国での今年の興行収入ランキングを見ると(6月15日時点、Boxofficemojo.com調べ)、2位に『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(1億1560万ドル)、3位に『X-MEN:フューチャー&パスト』(1億1440万ドル)、5位に『アメイジング・スパイダーマン2』(9440万ドル)とハリウッドのアメコミヒーロー映画が上位を占めている。
また『ロボコップ』は5080万ドルで、米国以外の海外市場では断トツの1位。米国の5860万ドルに迫る大ヒットとなっている。昨年の『パシフィック・リム』は米国以上の興収をあげたが、中国でハリウッド製のアクション映画は根強い人気がある。今後も中国はハリウッド映画で存在感を増しそうだ。(文:相良智弘/フリーライター)
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