おっかない女から天女のような存在委一変した
アンジー自身に重なるヒロイン像
ディズニーアニメの『眠れる森の美女』で、オーロラ姫に“永遠の眠り”の呪いをかけた、“マレフィセント”を主人公に実写化した『マレフィセント』が公開。邪悪な存在であるマレフィセントを多面的にとらえ、本来はピュアな心の持ち主である彼女の弱くて優しい人間味あふれる姿を描いている。
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アニメ版では、マレフィセントはオーロラ姫を必死に探しても成長するまで見つけられないが、本作ではマレフィセントは森に隠れ住むオーロラ姫の成長を影ながら見守り、正体を隠して交流も持つ。生まれながらの悪人ではないマレフィセントは無邪気に彼女に好感を持つオーロラ姫にしだいに心ほだされていき、オーロラ姫を見つめるマレフィセントの目は……。みなまで言わずとも、お察しいただけることと思う。オーロラ姫の幼少期を演じるのは、マレフィセント演じるアンジェリーナ・ジョリーの愛娘であるヴィヴィアン・ジョリー=ピットだということを付け足せば、すべて言ったも同然だろう。
監督の候補にはティム・バートンの名が一時浮上したようだが、本作のメガホンを取ったのは『アバター』や『アリス・イン・ワンダー・ランド』でアカデミー賞美術賞を受賞し、本作で監督デビューとなるロバート・ストロンバーグ。妖精などビジュアルはさすがに面白いが、ドラマ性は至ってストレートに描かれる。ティム・バートンが監督をつとめていたなら、マレフィセントのキャラクターがひねくれ者としてまた違った味わいになったかもしれない、とつい思ってしまう。
ストレートに、健気でかわいそうに描かれるマレフィセントを見ていると、そんなに身を売ってまで大衆の同情票を集めたいの? 悪いヤツは理由もなんにもなくただただ悪いヤツのままでいいじゃん!と悪態までつきたくなる。
ただ、前述の通り、マレフィセントを演じるのはアンジェリーナ・ジョリーだ。若い時分はエキセントリックで無茶な、おっかないオンナのイメージだったが、今やウソのように慈愛に満ちた天女のごとき存在となったアンジー自身とマレフィセントの人間像が重なって、喉まで出かかった悪態も引っ込んでしまう。これこそ作り手の思うツボなのだろうか。いろんな意味でヒロインが哀れで痛々しく見えて、結局のところ同情してしまうのだった。
(文:入江奈々/ライター)
『マレフィセント』は7月5日より全国公開中。
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