近頃公開された&公開を控えている日本映画とその主題歌を思いつくままに挙げてみると、以下のようになる。
・『わたしのハワイの歩きかた』→「アロハ式恋愛指南」竹内まりや
・『春を背負って』→「心の手紙」山崎まさよし
・『思い出のマーニー』→「Fine on the Outside」プリシラ・アーン
・『るろうに剣心 京都大火編』→「Mighty Long Fall」ONE OK ROCK
・『STAND BY ME ドラえもん』→「ひまわりの約束」秦基博
・『宇宙兄弟#0』→「早口カレー」「Feel So Moon」ユニコーン
・『ホットロード』→ 「OH MY LITTLE GIRL」尾崎豊
このラインナップを眺めてみても、特に共通項らしきものは見あたらない。「何でこの曲がこの映画の主題歌に!?」と、政治的な事情を邪推してしまうような不自然さも(実際はあるのかもしれないけれど)感じない。プリシラ・アーンはもともと大のジブリ好きで、ライヴでは『耳をすませば』の主題歌「カントリー・ロード」を日本語で歌ったりもしているし、第1作からの続投になる『るろ剣』のONE OK ROCKで言えば、主演の佐藤健とヴォーカルのtakaの公私にわたる交流が知られている。『宇宙兄弟#0』のユニコーン「Feel So Moon」はテレビアニメ版の主題歌が引き続き採用されたもので、映画用に書き下ろされた「早口カレー」とのダブル主題歌扱い。これは原作者で映画版の脚本も手がけた小山宙哉が大のユニコーン・ファンだったことから実現したものらしく、挿入歌に使用されているザ・クロマニヨンズ「雷雨決行」も同様の理由で使われることになったようだ。
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映画の制作者とアーティスト本人の間で何らかのキャッチボールがあって実現したという意味で、いま挙げた映画と主題歌の関係はどれも健全なものと言える。書き下ろし曲でも既発曲でも、曲が映画に寄り添いながら、観後の余韻を引き立てている。“主題歌<映画”というパワーバランスが保たれているわけだ。
その点、尾崎豊「OH MY LITTLE GIRL」を主題歌に選んだ『ホットロード』に関しては、ちょっと話が変わってくる。何せ相手は没後20年を経てもなお強い影響力を持ち続ける、文字通り伝説のシンガー・ソングライター。ともすれば映画そのものが食われてしまう可能性だって十分にある“大ネタ”だ。尾崎の曲はこれまでにも1999年の『大阪物語』で「風にうたえば」が、2001年の『LOVE SONG』では「OH MY LITTLE GIRL」と「Forget-me-not」が、2013年の『シェリー』では同名曲の「シェリー」(韓国女性歌手MayDoniによるカヴァー)が使われてきた。テレビドラマでも1994年に野島伸司脚本の『この世の果て』で「OH MY LITTLE GIRL」が使われたりしている。このうち『LOVE SONG』と『シェリー』は物語そのものが尾崎豊と深く関係する作品だが、どちらも映画としての完成度はいまひとつで、“主題歌>映画”というバランスは否めなかった。尾崎豊というアーティストの圧倒的な存在感とか得難い個性が逆説的に証明されていて、個人的にも「尾崎を主題歌に使うのはジョン・レノンと同じくらい難しいよなぁ……」と思ったりした。
そこへきて、本日から公開される『ホットロード』である。実は筆者もまだ見ていないのだが、作品の内容や時代設定からすると尾崎豊の楽曲が使われることに不自然さは感じない。能年玲奈や登坂広臣ら旬のキャスティングも話題性十分だし、宣伝にもたっぷり予算がかけられているようだ。テレビで見かける事前の宣伝では、主題歌とは別に尾崎の代表曲「I LOVE YOU」がイメージソングとして使われていたりもする。ここまでの“尾崎押し”がどれほど物語との相乗効果を上げているのか、かなり気になるところだ。また、尾崎豊の主題歌云々という以前に、原作コミックは多くの根強いファンを持つ作品だけに、その世界観の表現についても今後いろいろな評価が飛び交うに違いない。いずれにしても、早く自分の目で確かめたいと思わせる要素がたくさん詰まった話題作だ。(文:伊藤隆剛/ライター)
『ホットロード』は8月16日より全国公開中。
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