『TOKYO TRIBE』
好き嫌いがはっきり分かれる園子温監督の最新作
最近の日本の映画界で、園子温監督ほど好き嫌いがはっきり分かれる作家はいないかもしれない。2009年の『愛のむきだし』で多くの支持と評価を得たとは言え、その手加減のない演出やグレーゾーンを取っ払った世界観、常にメーターの振り切れたハイテンションな編集などは、時に熱心なファンですらついていけないことがあると思う。従来の映画のセオリーを徹底的に回避しながら物事の核心へ辿り着こうとする姿勢は、『むきだし』以降のどの作品にも共通している。やたら長尺な作品が多いのは、プロット的な必然性というよりは、その姿勢に忠実であるために必要な時間と考えるべきだろう。
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今日から公開される園監督の最新作『TOKYO TRIBE』は、上映時間こそ116分と比較的コンパクトだが、作品に込められた精神的/物理的なエネルギーは過去の作品にも決して引けを取らず、“いつもの園子温な感じ”が強烈にみなぎっている。
原作はストリート系ファッション誌に連載された井上三太のコミック「TOKYO TRIBE2」で、2006年にはテレビアニメ化もされている人気作品。近未来の東京で繰り広げられるストリート・ギャングの抗争を描いている。多様な主義主張を持ったトライブ(=族)が東京の各エリアで縄張りを持ち、日々乱闘や暴動を繰り返す。その“やられたらやり返す”的な構図は基本的にヤクザ映画と同じだが、本作の大きな呼び物になっているのは、ストーリーを押し進めるためのツールとしてラップを導入している点だ。“世界初のバトル・ラップ・ミュージカル”という触れ込み通り、節目節目でキャストがラップでディスり合う。状況説明や心情吐露も交えつつ、文字通り“ラップでバトル”を展開するスタイルは、他に類を見ないものだ。(文:伊藤隆剛/ライター)
『TOKYO TRIBE』は8月30日より新宿バルト9ほかにて全国公開中。
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