日本を代表する名匠・小津安二郎監督の異色作がヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア

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『風の中の牝雞』
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後期の小津調のスタイルに到達する前夜、感情がぶつかり合う描写に注目

名匠・小津安二郎監督作品『風の中の牝雞』4Kデジタル修復版が、第79回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門にてワールドプレミア上映されることが決定した。

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来年2023年に生誕120周年を迎える、日本を代表する映画監督、小津安二郎。その人気や評価は今なお色あせることなく、2012年のイギリスの映画雑誌「Sight&Sound」誌で世界の映画監督が選ぶ映画作品として1位に輝くなど、多くの世界中の映画人や映画ファンから高い支持を得ている。

これまでも小津作品は数々の映画祭での上映が行われ、その度に観客から喝采を浴び、再評価を高めてきた。そしてこの度、小津監督戦後2作目の作品『風の中の牝雞』(48年)が、第79回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門(ヴェニス・クラシックス)に選出され、ワールドプレミアが行われることが決定した。

本作は小津監督の戦後2本目の作品として戦後間もない時期に制作され、戦後の日本が抱える厳しい現実に焦点を当て、苦悩する女性の姿を描いた異色作だ。主演の田中絹代の演技は鬼気迫り、クライマックスの階段落ちのシーンは見るものを圧倒する。小津監督の作品の中でもひときわ異彩を放つ作品であり、後期の小津調のスタイルに到達する前夜の、感情がぶつかり合う描写は注目に値する。

海外から高い評価を受け『スパイの妻』(20年)で第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督も、2020年の松竹映画100周年の記念サイト”100年の100選”で、本作を好きな松竹映画の1本に選んでいる。小津監督の代表的な作品とは一線を画しながらも、多くの映画人から高く評価されている作品だ。

ヴェニス・クラシックスは、2012年に設立されたヴェネチア国際映画祭の一部門で、過去1年に復元されたクラシック作品の中から、特に優れた作品を選出する。今回、日本映画からは他に鈴木清順監督『殺しの烙印』(67年)、今村昌平監督『神々の深き欲望』(68年)の計3作品が選ばれている。

小津安二郎監督作品のデジタル修復版が世界三大映画祭クラシック部門へ選出されるのは、2013年のベルリン国際映画祭の『東京物語』(53年)以来、9作目となる。来年の生誕120周年に向け、さらに世界からの注目を集める、スタートにふさわしい素晴らしい機会となるだろう。