ウクライナ侵攻の本質とは? 硬直状態の始まりを知るための必見映画
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「プーチンに助けてほしい」今見るべき貴重なドキュメンタリー
ウクライナ情勢のバックグラウンドが見えてくる、貴重なドキュメンタリー『ウクライナから平和を叫ぶ~Peace to You All~』が、8月6日から、渋谷ユーロスペースでの公開を皮切りに、順次、全国で公開される。この度、ユライ・ムラヴェツJr.監督の渋谷ユーロスペースでの初日舞台挨拶(8月6日)が決定。公開を前に、ユライ・ムラヴェツJr.監督がウクライナについて語った。
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ロシアとヨーロッパに挟まれるその立地から、親ロシア派と親欧米派に分かれて対立してきたウクライナ。そんなウクライナの欧州連合やNATO加盟を警戒し、ロシアのプーチン大統領は圧力をかけてきた。
ことの発端は 2013年9月当時のヤヌコーヴィチ大統領が欧州連合との連合契約に署名しなかったことに遡る。
これを受け、親欧米派の野党や大統領の汚職を批判する市民による大規模な反政府デモが勃発。翌年、ヤヌコーヴィチ大統領は国外へ逃走し、ロシアによりクリミア半島が併合される。
さらにルハーンシク州とドネツク州では、親ロシア分離派が分離共和国を宣言。両共和国を反政府武装勢力とみなしたウクライナとの紛争状態に陥った。その渦中にいた国民に何が起きたのか。この状況をどう捉えてきたのか。生活はどう変わったのか。
2010年より旧ソ連の国々を取材してきたスロバキア人写真家ユライ・ムラヴェツJr.が2015年にウクライナ入りし、ドネツク側とウクライナ側の両方の生の声を記録。
ドネツク側では、戦場に参加した鉱夫と参加しなかった鉱夫、ウクライナ兵にスパイと間違えられ拘束された人、「プーチンに助けてほしい」と言う女性、ウクライナ側では、大佐、手榴弾で手足を失った退役軍人、老女、子供、ホームレスなど幅広い人の証言を網羅。当時の記憶を辿ることで、ウクライナで起こっている紛争の本質が見えてくる、今見るべき貴重なドキュメンタリーだ。
「この戦争は新しく始まったものではない」
──製作のきっかけをお教えください。
監督:僕の両親は実は2人とも新聞記者で、2人ともメディアで働いているんですけれども、幼少時代から父に出張に連れられて行きましたので、僕にとっては何かをドキュメントする、あるいは記事にする活動はごく自然なことだったんです。で、この戦争が起きたときに、ウクライナはスロバキアの隣だということもありますし、ユーロマイダンのときからハイブリッドな形の戦争ということで、スロバキアでもその影響を多少感じました。で、経済的に行ける距離であったということも大きく、何か起きている所に行きたいという自分の欲求を叶えるために、撮影に行きました。
──監督は大学で映画撮影と写真の両方を学んだとのことですが、同作では監督のモノクロ写真も多用されています。モノクロ写真は特に言葉がなくても人々の苦労が映し出されるように思いますが、同作で写真と映像両方を使っている理由をお教えください。
監督:僕にとって写真というのは、情熱的に感じるもので、その一瞬を撮るということにやはりとても興味があります。例えば、最初に写真の撮影をして、そのあとその人と映像のインタビューなどを撮っていきます。その写真から、その固まっている一瞬から人々が生き出すような、生き生きし始めるというような表現や、逆にその生き生きしていた人が固まるというような表現ができることが大変面白いと思います。戦争では「時が止まる」という言い方もありますけれども、まさにそういうことが表現できると思いますし、自分にとって現場で写真を撮れるのはもっとも理想的な環境ですので、このような手法を選びました。
──ウクライナ側と親ロシア派と、老若男女色んな方をインタビューしていて、人選が素晴らしいと思ったのですが、人選で工夫したことはありますか?
監督:実は2015年の時は、分離派独立という言葉にひかれてドネツクのほうに向かいました。映画でご覧いただいたように、普通に入ることができて車で各地を旅して泊まっては、誰かにインタビューするというような形でした。通りがかった人は皆さんかなり気軽にインタビューに答えてくれるというような状態でしたし、そのあとウクライナに行って同様に撮影をしましたけれども、みなさん話をしてくれました。3年間の製作期間のうちに、2年間は撮影に費やしましたが、登場人物たちの中には、綿密なリサーチに基づいて探したり選んだりした人もいます。冒頭の死者の携帯電話で電話を受けた女性の方がいましたが、彼女は探すのに半年もかかりました。
──同じ鉱夫でも戦争に参加した人、参加しなかった人、スパイに間違えられた人と3人のインタビューがあり、多様性を感じました。他にもインタビューして泣く泣くカットした人などはいますか?
監督:映画を自分が望んでない方向に引っ張っていってしまうような気がしたので、過激派の意見は含めませんでした。普通の人たちが戦争をどのように認識しているのかというのがこの映画のテーマでした。
──「スクーターに乗ればすべて忘れられる」と救われている女性や、ロシアン・スパニエルについてジョークを言う人など、暗いシーンだけでなかったのが救いでしたが、工夫はありましたか?
監督:スクーターの彼女は映画に大きく貢献してくれたと思います。重いテーマであっても、やはりユーモアが必要ですよね。重いテーマの映画を見ている観客の方でも少しこういったユーモアのあるシーンが入ることによってそのあとが見やすくなる。そのため悲劇的な話でもユーモアを含んだものを探すようにしています。
──同作の見どころはどこだと思いますか?
監督:この映画は、この戦争の本当の始まりを撮影したもので、関係者がそれに対して意見を言っているものです。今回の戦争というのは新しく始まった戦争ではなくて、8年間続いていた戦争が第2フェーズに移ったものです。戦争の始まりとなったマイダンと、そのあとの8年間の硬直状態の始まりを知るのに最適な映画だと思います。
──読者にメッセージをお願いします。
監督:まず僕の映画に興味を持っていただき、本当にありがとうございます。この映画はウクライナの戦争の始まりを映したものです。今の戦争は8年間続いていたフェーズが第二フェーズに移ったもので、その始まりを知るということは、大変大事なことだと思います。ぜひ自由な思考を持って見ていただいて判断していただければと思います。身の回りのことに、世界のことに関心を持ってもらえるとうれしいです。
『ウクライナから平和を叫ぶ~Peace to You All~』は、8月6日から、渋谷ユーロスペースをはじめ、全国で順次公開される。
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