8月5日はタクシーの日。1912年のこの日、東京・有楽町の数寄屋橋にあったタクシー自動車株式会社が日本で初めてのタクシーの営業を開始したことにちなむ記念日である。
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タクシーの車内は不思議な空間だ。運転手と2人きりで乗っていてもリラックスできて、身近な人にも話さないような身の上話をついしてしまうこともある。出会いが一期一会だから、というのもあるかもしれない。今回は、そんなタクシーが登場する作品を紹介しよう。
男女の“終わりから始まり”を描く『ちょっと思い出しただけ』
池松壮亮と伊藤沙莉を主演に、クリープハイプの尾崎世界観がジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げた新曲「Night on the Planet」を受けて、松居大悟監督が初めて書き下ろした本作。2021年の7月26日から始まるこの物語は、1年ずつ同じ日を遡り、別れてしまった男と女の“終わりから始まり”の6年間を描いている。
本作の中で伊藤が演じているのが、タクシードライバーの葉。池松演じる照生との別れも、幸せの絶頂にいた時も、多くのシーンでタクシーが印象的に登場する。作中には、2人がジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』を鑑賞するシーンもあるが、この映画はタクシー運転手と乗客の間に起こった出来事を描いたもの。
照生と葉の2人がタクシーに乗りながら『ナイト・オン・ザ・プラネット』のセリフを言って笑い合う姿は微笑ましい反面、別れる未来を知っているので胸が痛くなるシーンでもある。こんなにも濃密な時間を過ごしても“下車”の時間が訪れてしまうなんて…人との出会いはもしかしたらタクシーと似ているのかもしれない。そんなことを考えてしまう作品だ。
池松と伊藤の演技が非常に自然で、喧嘩のシーンは見ていてつらくなったり、ラブラブなシーンでは少し恥ずかしくなったりするほど。東京オリンピック開催目前の東京の姿も映されており、まるで現実に照生と葉たちが存在するかのようなリアリティにも注目して見てほしい。(Y)
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