女性の身体にのしかかる負担と精神的プレッシャーをユーモアと軽やかさをもって描写
これまでタブー視されることの多かった生理、避妊、中絶―女性の身体にのしかかる様々な負担や精神的プレッシャー、セクシャルマイノリティーが直面する社会的な差別をユーモアと軽やかさをもって描いた『セイント・フランシス』が、8月19日より劇場公開される。これを記念し、作家の山内マリコと本作の主演&脚本を務めるケリー・オサリヴァンとのトークイベントが開催された。
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8月4日にユーロライブで開催されたトークイベントでは、山内マリコが実際に登壇、ケリー・オサリヴァンがオンラインにてトークを行った。「主人公との共通点は本当にたくさんある」というケリー。彼女は主人公のブリジットと同じく「実際にナニーを経験したこと、そして中絶を経験した」ことがあり、映画の特性上、ある程度は誇張しつつも「非常にリアルな真実味を持ってこの作品に取り組むことができた」と明かす。
一方、山内はブリジットが名門校に通っていたことに言及、「そこで彼女はネクスト・シルヴィア・プラス(アメリカの女流詩人)と同級生から言われていたという設定ですが、でもこの夏彼女はずっとハリーポッターを読んでいるっていう設定が、すごくギャップがあって面白いなと思いました」と感想を述べる。
そのことについてケリーは「(ハリー・ポッターは)本作の脚本を書きながら私が読んでいたんです」と明かし、「ブリジットにとっては、子供の感情に戻るひと夏だった、ということを示していますね」「彼女には、社会がある意味レッテルを貼るというか、これは高尚なものだとか、これが成功だとか決めつけたものから少し外れて考えるための夏だったのかな」とも語った。
ブリジットの親友ダナが電話でしか登場しないことを山内が指摘すると、ケリーはその理由を「ブリジットがいかに孤立しているのかを見せたかったため」だと明かした。「だからブリジットは中絶をしたことをダナを含め誰にも相談してないんです。友達の多くが子育てや仕事など彼女とは別の次元で忙しいわけです」「最初はダナもブリジットをサポートしてナニーの仕事を紹介するものの、その後は自分の子育てに忙しくて相手ができない。ブリジットは頼れる人が誰もいない」。でも、だからこそ「彼女がナニーとして関わるフランシスの家族に深く結びつくことができる、とも言えます」とその意図を語った。
山内は「ブリジットが中学生までカトリックだったということと、でも彼女が当たり前のように中絶を選択するということ」に込めた思いについて質問。ケリーは「私は幼稚園から14歳くらいまでアイルランド系のカトリックの学校に通っていました。ただ、聖母マリアの処女受胎を信じていたかというと、そういうわけではないです」「カトリックではもちろん中絶は大罪です。でもブリジットはそういう背景を持っていても、今はもう信じていない」と答える。
さらにケリーは、ブリジットとカトリック信者であるマヤの関係を通じ、「その宗教観というものが明らかになり、ブリジットは大人になるにつれ中絶は罪という気持ちを持ちながらも現実的な人生の選択を考え、知的レベルではそれは罪ではないと分かっていても、どこか心の奥底にある自分と向き合わなければという部分があった」と解説する。
最後に「来てくださってありがとう! 今日のディスカッションを楽しみました」と日本の観客に向けてメッセージを送ったケリー。「心の中で何度もスタンディングオベーションを送りました」「女子のリアルがこんなにも自然に詰まった映画は、ちょっと他にない」と絶賛する山内とともに、その見どころを本音で語り合う貴重な機会となった。
『セイント・フランシス』は8月19日より劇場公開される。
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