古くは『素晴らしき哉、人生!』や『34丁目の奇跡』、ミュージカルの『ホワイト・クリスマス』から、『ホーム・アローン』『ラブ・アクチュアリー』『ポーラー・エクスプレス』『あなたが寝てる間に…』『ノエル』まで。クリスマスをテーマにした映画は数多く作られているが、ここでは映像と音楽が絶妙な相互作用を見せる“「映画を聴く」的クリスマス映画”を5作品ほどリストアップしてみた。いずれも言わずと知れた名作ばかりだが、その音楽に改めて耳を傾けながら、再見してみてはいかがだろうか。
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映画:『スモーク』
音楽:「Innocent When You Dream」トム・ウェイツ
ハーヴェイ・カイテルの演じるタバコ屋のオーギーが、ウィリアム・ハート演じる作家のポールに語って聞かせる、クリスマスの奇妙なエピソード。ポールが「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」というタイトルで、その話を小説に仕立て上げるシーンでこの曲が流れる。いたって真っ当なメロディを持つ曲が、独特のダミ声で歌われることでオンリーワンの輝きを放つ。そんなトム・ウェイツの作風は映画との親和性が高く、特に本作や『ナイト・オン・ザ・プラネット』『ワン・フロム・ザ・ハート』のような、都市生活者の孤独をファンタジックに描いた作品の世界観を目一杯引き立てる。本人も役者として、けっこう多くの映画に出演している。
映画:『グレムリン』
音楽:「Christmas」ダーレン・ラヴ
ちょうど30年前のクリスマス時期に日本公開された「グレムリン」では、劇中『素晴らしき哉、人生!』や『白雪姫』と共に、クリスマス的なアクセントとしてダーレン・ラヴの「Christmas」という曲が使われている。プロデューサーのフィル・スペクターによって制作されたこの曲は、“ウォール・オブ・サウンド(音の壁)”と呼ばれる途轍もなく分厚い音像を特徴としている。何の変哲もない郊外の住宅地が、この非現実的とも言える重厚なサウンドをバックに映し出されることで、画面には不吉な予感が横溢する。光が強いほど影も濃い。アメリカン・ポップスに時折感じられるそんな“狂気”が、映画の伏線としてうまく作用している。
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(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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