性的シーンにインティマシー・コーディネーターは必要? 不要? 英俳優の発言が物議
#インティマシー・コーディネーター#インティマシーコーディネーター#エマ・トンプソン#ショーン・ビーン#レイチェル・ゼグラー#レナ・ホール
愛の自然な描写が台無しに?
映画『ロード・オブ・ザ・リング』やドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のネッド・スターク役などで知られるイギリスの俳優ショーン・ビーンが、映画の撮影現場でのインティマシー・コーディネーター起用に否定的な発言をし、異を唱える声が続出している。
・性的シーンで震える生身の俳優たち、守るための取り組みは始まったばかり
インティマシー・コーディネーターとは、裸になるシーンや性的なことなど親密な(インティマシー/intimacy)シーンにおいて、俳優が安全に演じられるよう、俳優と製作側の間で調整する役割を担っている。
ビーンは先日、イギリスの「The Sunday Time」紙上で、インティマシー・コーディネーターによって“親密なシーン”における自然さが損なわれることを懸念していると発言。「愛し合う者同士の自然な行動が、誰かによって技術的なエクササイズに落とし込まれることで台無しになるだろう」と語った。
インタビュアーが、インティマシー・コーディネーターは#MeToo運動を受けて、女優が安心して仕事できるようにするために取られた方針だと指摘すると、ビーンはドラマ『スノーピアサー』シーズン2で共演したレナ・ホールの名前を挙げて、以下のような自説を述べた。
「女優によると思う。あの人(レナ・ホール)はミュージカル『キャバレー』の経験があるから。彼女は何でもやれる」。
この発言にレナ・ホール本人が反応し、Twitterで連続ツイートして反論した。
ホールは「演劇(『キャバレー』ではありません。でも、たまに演じることもあります)をしているからといって、私が何でもやるというわけではありません」と断言。ビーンと演じたシーンについては何の不安もなく安心感があったとしつつ、だからといってインティマシー・コーディネーターについて余計だと思っているわけではない、とその必要性を語った。
2. Just because I am in theater (not cabaret, but I do perform them every once in a while) does not mean that I am up for anything. Seriously does depend on the other actor, the scene we are about to do, the director, and whatever crew has to be in there to film it.
— Lena Hall (@LenaRockerHall) August 8, 2022
ビーンについて「素晴らしい俳優で、私の気を楽にしてくれただけではありません。あのような奇妙なシーンにおいて、本物の共演者でいてくれたのです」としたうえで、「俳優が非常に感情的なシーン(自殺しようとしたり、レイプされるなど)をやらなければならない場合、撮影後に話を聞いてくれるメンタルヘルスの専門家が必要だと思います」と綴った。
5. I feel that when an actor has to do a scene that is extremely emotional (like committing suicide or being raped) there needs be some kind of mental health person available to talk to post shoot. Even though we are only acting we are still experiencing trauma.
— Lena Hall (@LenaRockerHall) August 8, 2022
さらに、「インティマシー・コーディネーターは撮影現場に歓迎される存在だと思うし、他のシーンで経験したトラウマを解消するのにも役立つと思います。必要な時もあるし、そうではない時もありますが、人それぞれで、シーンや経験も異なるのです」と結んだ。
6. I do feel that intimacy coordinators are a welcome addition to the set and think they could also help with the trauma experienced in other scenes. Sometimes you need em sometimes you don't but every single person and scene and experience is different.
— Lena Hall (@LenaRockerHall) August 8, 2022
映画『ウエスト・サイド・ストーリー』でヒロインを演じたレイチェル・ゼグラーは「インティマシー・コーディネーターは俳優たちに安全な環境を整えてくれます。『ウエスト・サイド・ストーリー』にもいてくれたことに、私は非常に感謝しています。私のような新人にも優しく接し、長年の経験を持つ共演者たちのことも指導していました。親密なシーンでの自然さは安全ではなくなることもあり得ます。目を覚まして」と強い調子でツイートした。
intimacy coordinators establish an environment of safety for actors. i was extremely grateful for the one we had on WSS— they showed grace to a newcomer like myself + educated those around me who’ve had years of experience.
spontaneity in intimate scenes can be unsafe. wake up. https://t.co/bpxT2DVU1R
— rachel zegler (she/her/hers) (@rachelzegler) August 8, 2022
この件はハリウッドの業界誌「Variety」をはじめ各誌が報じたが、前出のホールは対立を煽るような報道には違和感があるようだ。
「Variety」が「レイチェル・ゼグラー、レナ・ホールをはじめ俳優たちがショーン・ビーンのインティマシー・コーディネーター批判に応戦」と報じたことについて、ホールはツイッターで「私は戦っているのでしょうか? それとも私は自分の望むことや記事中の誤報を明確にしているのでしょうか? なぜ“戦う(fighting)”という表現?」と疑問を呈している。
Am I fighting? Or am I clarifying my needs and any misinformation in the article? Why the term fighting? https://t.co/ekyfdWPu6u
— Lena Hall (@LenaRockerHall) August 9, 2022
英国の名女優 エマ・トンプソンも意見を表明
ベテランの立場から意見を表明したのはエマ・トンプソンだ。
オーストラリアのポッドキャスト『Fitzy & Wippa』に出演したトンプソンは、インティマシー・コーディネーターは「ファンタスティックなほどに重要」と独特の表現で必要性を語った。
「ただ流れに任せるだけではダメなんです。そこにカメラがあり、スタッフがいます。ホテルの部屋で2人きりではなく、大勢の男たちに囲まれているんですから、快適な状況とは言えませんよ」と語ったトンプソンの最新主演作『Good Luck to You, Leo Grande(原題)』は、未亡人である主人公とセックスワーカーの青年の交流を描くセックス・コメディで、撮影現場ではインティマシー・コーディネーターを重用したという。
トンプソンは「“気が散る”俳優もいるかもしれないが、他の人たちは『快適になった。安心できた。この仕事ができるんだという気持ちにさせてくれた』と感じるでしょう」と言い、「(インティマシー・コーディネーター批判をした)俳優が誰なのかは知らないけれど」と前置きして、「もしかしたら、彼の家に偶然にもインティマシー・コーディネーターがいたのかもね」と付け加えた。
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