【日本映画界の問題点を探る】アジアの撮影現場にはエネルギーが満ちていた、ハリウッドとの協業で得たものとは?
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大物監督からのオファーが絶えない女性カメラマン
【日本映画界の問題点を探る/女性カメラマン第一人者が実感したアジアの台頭 1】日本映画界において、女性カメラマンの第一人者として知られている芦澤明子(あしざわ・あきこ)。黒沢清監督や深田晃司監督を筆頭に錚々たる監督たちからのオファーは絶えることがなく、第一線を走り続けている。最新作『復讐は私にまかせて』では、インドネシアの気鋭エドウィン監督と2度目のタッグを組み、アクション映画に初挑戦。喧嘩っ早い勃起不全の男と伝統武術の達人である女による恋愛を描いた異色作で、活躍の場をさらに広げている。
・性的シーンで震える生身の俳優たち、守るための取り組みは始まったばかり
・勃起不全のケンカ野郎と最強美女の愛と復讐の物語『復讐は私にまかせて』
そこで、さまざま現場を経験してきた芦澤が思う海外の映画作りから学ぶべき点、長年のキャリアを通して振り返る日本映画界の過去と現在、そして未来に対する期待などについて話を聞いた。
芦澤とエドウィン監督の出会いは、2018年公開の深田晃司作『海を駆ける』のインドネシアロケでのこと。そのときに知り合ったプロデューサーから紹介されると、エドウィン監督が手掛けたアジア・オムニバス映画製作シリーズ『アジア三面鏡2018:Journey』の短編『第三の変数』で撮影を担当。続いて、本作で再び熱いラブコールを受けたという。
日本より3倍くらい苦労すると思っていたけれど…
「エドウィン監督はいい意味で“変人”なので、また一緒に仕事がしたいと思っていました。今回のお話をいただいたとき、私に頼むということは、旅モノや柔らかいテイストか、日本人の目線を必要とする作品かと思っていたら『ものすごいアクション映画だよ』と。インドネシアといえばアクション大国ですし、アクションと名のつく作品は撮ったことがなかったので、本当にいいのか確認したのですが、『大丈夫!』と軽く言うので受けることにしました。危険なこともありましたが、おもしろい現場でとても楽しかったです」
数名の日本人とインドネシア人が中心となって動いていたという今回の現場。言葉も文化も違うなかで、苦労したことも多かったのではないかと想像していたが、返ってきたのは予想外の答えだった。
「最初は私も日本でやるときより3倍くらいの労力がかかるのではないかと思って、プロデューサーを脅かしていたんです。でも、インドネシアのスタッフが感動するほど優秀だったので、問題があったとすれば言葉だけ。といっても、英語がほとんど話せない私でもわかるようにゆっくりしゃべってくれましたし、技術的なことや機材などの名前はわかっているので、意外とすぐに馴染めました」
とはいえ、近年の日本の現場だったら味わえないような経験もしたと笑いながら振り返る。
「日本もインドネシアも安全第一ではありますが、インドネシアのほうがチャレンジ精神にあふれているようなところがあるので、正直に言うと、後から考えるとゾッとするようなこともありました。例えば、荷物をたくさん積んだトラックが夜道を左右にゆらゆらと走っているシーン。撮影しているときは夢中になっていたので何も思わなかったですが、かなり近い距離で撮影していたので、いまになって『あのとき木材がひとつでも落ちていたらどうなっていただろうか』と考えると、危なかったなと……。ただ、医療体制などはきちんと整えていますし、インドネシアの人たちも決して向こう見ずにしているわけではなく、ギリギリまでがんばろうとするエネルギーに満ちている感じでした」
では、日本では難しいことがなぜインドネシアではできるのか。その境界線について、芦澤はこう指摘する。
「いまの日本では、コンプライアンスの意識が非常に高いですからね。とはいえ、インドネシアの人たちはハリウッドとも仕事をしているので、もちろんコンプライアンスを大切にしなければいけないことはわかっています。ただ、彼らはコンプライアンスを理解したうえで、自分たちのやり方をいい塩梅でミックスさせるノウハウを知っているように感じました。それは大きいかもしれませんね」
(text:志村昌美)
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