【日本映画界の問題点を探る】「振り返ると誰もいない」人手不足の現状 余裕のない現場から次の才能は出てこない
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女性スタッフがアシスタントから“卒業”できない理由は?
【日本映画界の問題点を探る/女性カメラマン第一人者が実感したアジアの台頭 3】いまだに男性社会と言われることが多い日本の映画界。しかし、インドネシア同様に日本でも着実に女性の活躍は広がっている。とはいえ、芦澤明子(あしざわ・あきこ)が仕事を始めた当初、周りのカメラマンは全員男性だったという。
・【日本映画界の問題点を探る/女性カメラマン第一人者が実感したアジアの台頭】記事を全て読む(全4回/4回目は8月27日に掲載予定)
・インティマシー・コーディネーターは普及するか/我慢を強いられてきた製作現場〜
「大変なことはあっても、特に働きにくさは感じなかったですね。私の場合は、恵まれていたというか、周りのほうが気を遣ってくれていたのかもしれません。カメラマンになって最初にいただいたお仕事は、保健体育の時間に見るような教育的な映画。女子の生理について男子が学ぶ内容でしたが、当時の男性プロデューサーとしては、女性カメラマンを活かすにはこういう仕事がいいんじゃないかという意識だったと思います。私はその気持ちも理解できたので嫌ではありませんでしたが、すごく象徴的なことだなとは感じました」
日本の現場では、「女性がアシスタントからなかなか“卒業”できない」という声も上がっている。自身がカメラマンとして独立する際、そういった壁を感じたこともあったのか聞いてみた。
「女性が助手から技師になる場合、超えなければいけないステップは男性に比べると高いのかなという印象は今でもありますね。理由のひとつに考えられるのは、助手をしている女性には優秀な方が多いので、上の人が自分にとって便利だからずっと助手でいてほしいとしている部分もあるのかもしれません。そんなふうに、優秀であるがゆえに技師になれず苦労している女性は、意外と多いと思います。ちなみに、私は全然優秀な助手ではなかったから、誰にも助手をしてほしいと引き止められなかったんでしょうね(笑)。でも、そこをうまく乗り越えられれば、助手としていい仕事をしている方も技師としてバリバリ活躍できるんじゃないかなと感じています」
才能が集まるのは活気ある業界だが…
そのほかにも日本の映画界では、厳しい労働環境などの影響もあり、若い世代が続かないといった問題もささやかれている。このままでは次世代が育たないという危機感もあるが、こういった状況を生み出してしまう根源についてどう感じているのか、自身の経験を踏まえたうえで分析してもらった。
「やはり、いろんな意味で『余裕がない』というのがあると思います。それは、時間が足りていないことや人員不足などが原因としてありますが、そうすると忙しすぎて休憩を取ることもできないため、どんどん仕事が流れ作業になり、エネルギーが伴わないという悪循環にも陥ってしまうのです。しかも、こういう状況になると、優秀な助手さんに仕事が集中してしまうので、次を育てることもできません。昔は、どんなに忙しくても代わりになってくれる人がいましたが、最近は振り返っても誰もいないんですよ。いつの時代も、才能が集まるのはイキイキとした業界なので、若い人たちが入ってきてくれない理由は、業界としてのパワーが落ちてきていることも原因なのかもしれません」
では、業界を盛り上げていくために、いまできることとは一体何があるのか。
「まずは、みなさんにもっと映画を好きになってもらうためにどうすべきかを考えなければいけないと思っています。最近はいろんな監督も出てきているので、どうしたら彼らが作った映画をたくさん見てもらえるのか。そう考えると、映画ファンを育ててくれるような映画評論家にも出てきてもらいたいですね。昔は、映画評論家がいろんなところでガンガン議論を繰り広げ、映画ファンを育ててくれたものです。でも、最近はそういうエネルギーがあまり感じられないので、現場だけでなくそのあたりも一緒に活性化してもらえたらいいかなと。あとは、動画配信サービスの登場で映画館がダメになったと言われていますが、映画館には映画でしか味わえない絶対的なものがあります。ただし、高いお金を払ってもらうわけですから、それに見合うものを提供する必要性はあると感じています」
(text:志村昌美)
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