【日本映画界の問題点を探る】映画人はもっと海外交流を! 日本の長所と欠点を知ることが未来に繋がる
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パワハラ体質な監督に変化? ハラスメント防止講座の効果
【日本映画界の問題点を探る/女性カメラマン第一人者が実感したアジアの台頭 4】現在、日本の映画界は、MeToo運動に端を発してさまざまな問題が噴出。まさに過渡期を迎えていると言えるだろう。今年で71歳となる芦澤明子(あしざわ・あきこ)は、自主制作をしていた学生時代から助手の時代も含めると50年近くその移り変わりを見てきたことになる。
・「振り返ると誰もいない」人手不足の現状 余裕のない現場から次の才能は出てこない
・ラブシーンの調整役インティマシー・コーディネーターは「人間の尊厳に関わる仕事」
「私が知っているのは70年代頃からにはなりますが、間違いなくパワーはあったので、その頃の作品を見ると溢れ出るものを感じますよね。それは、当時がそういう社会だったというのも大きかったとは思いますが、いまだったらコンプライアンス的に一発でダメなことも平気でしてましたから(笑)。ただ、パワハラみたいなことがはびこっていた時代でもあるので、女性にとって働きやすいか、という意味では今のほうが良くなっていると感じる部分はあります」
芦澤は自分のことを「ラッキーだったと思う」と話しているが、女性であるがゆえの苦労を味わうことがあっても、それ以上に自分を守ってくれる人たちに囲まれていたと明かす。
「若い頃にある現場で、『女性の助手なんてダメだよ』とか『女性だからそういう失敗をしてしまうんじゃないか?』と言われたときに、男性の上司が間に入ってうまく収めてくれたことがありました。それは本当に嬉しい経験でもあったので、私も下の子たちには同じようにしたいと考えています。若ければ若いほど抵抗できませんから、私が壁になってあげられたら、と。今、報道されているような出来事を自分が参加した現場で目の当たりにしたことはありませんでしたが、声を上げている人たちを孤立させないためのサポートもできたらと考えています」
業界としての取り組みはまだまだ始まったばかりだが、ここ数年で芦澤自身もある意識の変化を感じているという。
「最近は、現場に入る前にあらゆるハラスメントを無くすための講習を受ける機会が増えました。正直に言うと、きれいごとで絵に描いた餅のようだなと最初は思っていたんです。でも、毎回話を聞いているうちに、現場でも『もしかしてこれはパワハラになっていないだろうか?』と考え始めるようになっていることに気がつきました。そんなふうに、ほんの少しずつではありますが、続けていくことで必ず成果は出てくると感じています。昔は他人を追及することでエネルギーを発散していたような監督と久しぶりに会ったら、言葉遣いが優しくなっていたので、『講座が効いているのかな?』と思ったこともあったほど(笑)。地道なことではありますが、やはり『継続は力なり』だと実感しています」
国内だけに囚われず、海外のルールに合わせる姿勢も必要
さらに、早くからハラスメント問題に取り組んでいる深田晃司監督の現場からも、学ぶことはあったと付け加える。
「俳優を大事にするというのは多くの監督がしていることですが、同時に技師クラスから助手クラスのスタッフたちのことまでつねに気遣っているのが深田監督です。そういった姿勢が、いま行っているような運動の原点にはあると思っています」
これからもまだまだ現役を貫く芦澤は、今後の日本映画界を担う世代に伝えたいことがあると思わず力が入る。
「いま、アジアの映画界では韓国やタイなどが中心になっているので、もっとほかの国の人たちと交流をしてほしいと思っています。そうすることで、相手のいいところだけではなく、日本のいいところも見えてくるはずです。日本には進んでいるところもあれば、まだまだ遅れているところもあるので、それを知るいい機会にもなるのではないかな、と。そのためには、ドメスティックなことだけに囚われず、相手のルールに合わせてやってみる姿勢も必要だと思います。みなさんもどんどん海外に出て行って大丈夫ですよ、英語がしゃべれない私でも出来ていますから(笑)。いまの日本には、若い才能や女性たちなど、いろんな芽がたくさん出てきているので、みんなでそれをもっと育てていきましょうと言いたいです」
・【日本映画界の問題点を探る/女性カメラマン第一人者が実感したアジアの台頭】記事を全て読む(全4回)
(text:志村昌美)
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