都会で自分の居場所を見つけられない主人公が故郷の山村に帰り、自給自足の生活をしながら生きる力を充電していく姿を、旬の食材を生かした日々の食事とともに描いた『リトル・フォレスト』。この映画が、現在開催中の第65回ベルリン国際映画祭の「キュリナリー・シネマ」部門に正式招待され、2月10日(現地時間)に行われた公式上映に、主演の橋本愛と森淳一監督が参加した。
舞台挨拶で橋本が着用したのは戦前のアンティークの着物。“打ち出の小槌”など日本の昔話に登場するモチーフが散りばめられ、帯は手刺繍で「唐獅子」のモチーフが施されたおめでたい柄だ。キュリナリー・シネマ部門代表のトーマス・ストラックより紹介され、森監督とともに登壇した橋本の華やかな着物姿に、観客からは大きな歓声が送られた。
その橋本は完璧なドイツ語で「初めまして、橋本愛です。私にとって初めての海外映画祭参加がこのベルリン映画祭という素晴らしい場所で、この映画を上映する機会をいただけたことを大変光栄に思います」と挨拶すると、「本作で日本の表情豊かな風景と、自然と共生しているからこそ生まれた食の魅力が伝われば嬉しいです」というメッセージを伝え、大いに観客を沸かせた。
観客は40代の男女が中心だが、女性同士だけでなく、夫婦や家族での来場も多く見られた。上映中は料理がスクリーンいっぱいに登場するたびに客席から声が上がり、今まで見たことがない日本食に驚くと同時に、食事の時間を待ちきれない人々から溜息が漏れていた。
公式上映後は、映画を堪能した観客200名とともに豪華レストラン「Gropius Mirror」に会場を移し、ドイツ屈指のレストラン「facil」のシェフで、ミシュランガイドにおいて2つ星を取得したミハエル・ケンプが『リトル・フォレスト』にインスパイアされて作った特別メニューを食した。
このディナーを食べた橋本は「ミハエルさんを中心にドイツ人シェフの方々が『リトル・フォレスト』を見て、そこから趣向を凝らして一生懸命作ってくださっているのが、ものすごく伝わってきて、本当にありがたく感じました」とコメント。
その後はディナー会場でそのまま、橋本と森監督がトークセッションに臨んだ。司会から「映画の中では、近代的で若い女性を演じられていますが、実際に山の中で生活をするのと、都会で生活するのとでは、どちらが良いですか?」と質問をされた橋本は「昔は自給自足の生活に憧れていたのですが、この映画の準備のために自給自足に近い生活をしたんですね。そうしたら、やっぱり都会がいいなと思いました(笑)」と答えていた。
また、この日の昼には橋本愛がベルリンの街を観光。「ポツダム広場」にある「ベルリンの壁」の前で記念撮影したり。「ブランデンブルク門」前では、ヴェンダース監督の代表作である『ベルリン 天使の詩』で有名になった天使の像がある戦争勝利記念塔を見つけて興奮したり、食事を楽しんだりと、街散策を楽しんだ様子だった。
『リトル・フォレスト 冬・春』は2月14日より全国公開となる。
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