（後編）先週は大外し！ 今週はイーストウッド史上最大のヒット『アメリカン・スナイパー』が日本も席巻するか？

（…前編より続く）

○【6位予想】『きっと、星のせいじゃない。』
全米で大ヒットした恋愛小説「さよならを待つふたりのために」を映画化。日本でもヒットした『（500）日のサマー』の脚本家スコット・ノイスタッター＆マイケル・H・ウェバーが脚本を担当した青春物語。甲状腺がんの転移により、酸素ボンベが手放せない16歳の少女と、片足を失った17歳の青年が、死に向き合いながらも懸命に生きる姿を描いている。
全米では、拡大公開週に約4800万ドルを稼ぎ、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』を抑え首位に立つほどの好成績を収めた。主演のシャイリーン・ウッドリーは、前作『ダイバージェント』（14年）が日本では全国199スクリーンでスタートし、動員約3万人を集め9位、ジョージ・クルーニーと共演した『ファミリー・ツリー』（12年）が全国227スクリーンで約4万人で6位。堅実な結果を残している。
人気漫画家・目黒あむとのイラスト・コラボレーションや、日本版のイメージソングに「AAA（トリプル・エー）」の新曲「Lil’ Infinity」が起用されるなど、若い世代向けのプロモーションも精力的に行っている。上映館数は約200館と確保しており、若年層へのアプローチが功を奏せば好結果を残すだけの下地は十分だ。

・【週末シネマリサーチ】（前編）先週は大失態の大外し！ 今週はイーストウッド史上最大のヒット『アメリカン・スナイパー』は日本も席巻するか！

▲【10位予想】『花とアリス殺人事件』
2004年に岩井俊二監督が鈴木杏・蒼井優主演で映画化した『花とアリス』の前日譚を描いた長編アニメーション映画。主人公の有栖川徹子と荒井花の声を、鈴木杏と蒼井がつとめる。
公開時、上映館数が40館前後と少ないため、どこまで数字が伸びるかは判断しづらいが、新宿バルト9では「岩井俊二映画祭」を開催するなど、公開に向けてにわかに盛り上がりを見せている。2月8日に行われたスタジオ・ジブリの鈴木敏夫プロデューサーと岩井監督のトークショーでは、鈴木プロデューサーが「傑作」と太鼓判を押し、いやが上にも期待が高まる。

【注目シネマ】
×『フェラーリの運ぶ夢』
小規模公開ながら、スマッシュヒットを記録したインド映画『きっと、うまくいく』の監督ラージクマール・ヒラーニが脚本と製作を担当。息子のクリケット強化合宿に参加する費用をねん出しようとする父と、元クリケット選手でありながら、クリケットから距離を置く祖父、そしてクリケット選手への夢を馳せる息子。男三世代が繰り広げるヒューマンドラマだ。
公開時、10館前後（公式HP参照）ということもあり、ランキングに入ってくることは難しいかもしれないが、『きっと、うまくいく』は日本でも“ボリウッド”という言葉を大いに浸透させる役割を担うほどのインパクトを与えた作品。上映館に人が押し寄せた。インド映画ファンも確実に増えており、上映される映画館に詰めかける人々の姿が想像できる。

×『君が生きた証』
『ファーゴ』などの俳優ウィリアム・H・メイシーが初監督をつとめた作品。銃乱射事件で愛する息子をなくしてしまった父が、息子が残した音楽テープの楽曲をライブハウスで歌いながら自らの再生と、息子への愛情を再認識していく姿を描いた人間物語。
公開に先駆けて行われた先行上映では、映画史上初の試みとして、観客が入場料を決めるという形式がとられた。過去には「つまらなければ返金」という企画はあったが、観客が入場料を決めるというのは前例がない。“話題作り”と言ってしまえばそれまでだが、低評価にならないという作品への自信がなければできない企画。「良質な物語を1人でも多くの人に見てもらいたい」という強い意志が多くの映画ファンに伝わることを願いたい。

（文：磯部正和／映画ライター）

磯部正和（いそべ・まさかず）
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

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