2月22日、北海道夕張市で開催中の「第25回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のクロージングセレモニーおよび授賞式が行われ、本映画祭最高賞にあたるオフシアター・コンペティション部門のグランプリに、アダルトビデオ監督の経験を持つ50歳の森川圭監督作『メイクルーム』が輝いた。
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森川監督は「助監督として30年ぐらいピンク映画などに携わっていた」と自らの経歴を語ると「普段はアダルトビデオの監督や撮影をやっているのですが、4年前に舞台の話が来たんです。その時、小劇場で公演した作品が今回の基盤になっています」と製作のきっかけを明かす。さらに「アダルトビデオを撮っていると、一般作やCMなどを撮りづらいという弊害があるので、多くの人はアダルトビデオでは名前を変えている。僕はそれをどこまで覆せるかを試してみたかったので本名でやっていました」と秘めた思いを吐露した。
舞台はアダルトビデオ撮影現場のメイクルーム。狭い空間で繰り広げられる人々のドタバタをコミカルに描いているが、審査員をつとめた特殊メイクアップアーティストで映画監督の西村喜廣は「このジャンルは若者のもの。おっさんがやるなんて卑怯だよ」と満面の笑顔で語ると「でも僕は最高にこの作品好きです」と賛辞を送った。
審査委員長の大森一樹監督は「こういう映画祭のコンペは若い人間がもてはやされていますが、その意味では50歳の監督が受賞したのは嬉しいですね」と語ると「年をとっているからこそ伝えられることもある。若ければいいという風潮に一石を投じられたのかも」と受賞の意義を述べた。
グランプリを受賞した作品には、次回作製作の支援金として200万円が贈呈される。「この作品の3ヵ月後を描いた続編の脚本がすでにできているので、許されるならパート2を作りたいですね」と森川監督は今後の予定を語った。
授賞式後、鈴木直道夕張市長と、澤田直矢フェスティバル・ディレクターが取材に応じ、22日夕方時点での観客動員数が1万2439人であることを発表。前年比120パーセントの動員であることとともに、夕張市民有志主催の「ストーブパーティ」の収入(会費等ではなく、気持ちとして参加者が金額を自由に入れる方式)が過去最高であったことに「充実した内容だったと思っている」と総括した。
(text&phopto:磯部正和)
【ゆうばり国際ファンタスティック2015 受賞作一覧】
<オフシアター・コンペティション部門>
・グランプリ『メイクルーム』(森川圭監督)
・審査員特別賞『眠れる美女の限界』(二宮健監督)
・北海道知事賞『歯まん』(岡部哲也監督)
・シネガーアワード『MIZO』(ナム・ギウン監督)
・スカパー!映画チャンネル賞『私たちのハァハァ』(松居大悟監督)
<ショートフィルム・コンペティション部門>
・グランプリ「今月のあの日」(ジラッサヤー・ウォンスティン監督)
・審査員特別賞「拝啓アトム」(吉池巨成監督)
・優秀美術賞「ハードル」(パク・ソンジン監督)/「Green Glows」(白田明日香監督)/「恵まれたマシーン V」(ジョシー・マリス監督)
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