アカデミー賞名スピーチ。最も心を打ったのは「居場所がないと思っている子どもたち」に贈る言葉
22日(現地時間)に開催された第87回アカデミー賞授賞式。昨年はピザの宅配がやって来たり、客席のスターたちと司会のエレン・デジェネレスがセルフィーを撮ったり、くだけた雰囲気だったが、今年はなんといっても感動的なスピーチ、それも個人的な内容でありながら同時に社会に向けたメッセージ性も帯びた内容のものが多かった。
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最初に発表された助演男優賞を受賞した『セッション』のJ・K・シモンズのスピーチから、すでにその兆候は見てとれた。立派に子育てをした愛妻を讃えた後、会場や視聴者に対して「もし幸運にもご両親が健在なら、電話しなさい! 携帯メールや電子メールではだめだ。電話して、愛していると伝えて感謝をし、彼らが話したいだけ話してもらいなさい」と、受賞作で演じた鬼教師とはまた違う表情ながら、教壇から生徒に語りかけるような調子で感謝を述べた。
シモンズと同様、下馬評通りの助演女優賞受賞となった『6才のボクが、大人になるまで。』のパトリシア・アークェットは作品関係者や家族へ感謝を述べた後、「この国の市民と納税者を産んだ女性たちへ。私たちはこれまでずっと他者の平等のために戦ってきました。今こそアメリカの女性が賃金の平等、権利の平等を手にする時です」と力強く語った。この発言には惜しくも同賞受賞を逃したメリル・ストリープと隣席のジェニファー・ロペスも大興奮。歓声をあげ、大きな身ぶりで支持を表明し、会場からも喝采が湧き起った。
昨年は主演男優賞のマシュー・マコノヒーをはじめ、よく練られた見事なスピーチが印象に残っているが、今年の受賞者は感極まり、それでも言いたいことはしっかり言うパターンが多かった。その流れを最初に作ったのは外国語映画賞を受賞した『イーダ』のパヴェル・パヴリコフスキー監督。スピーチの途中で音楽が鳴り始めても「あ、退場か。それじゃ手短に」と言いながらも謝辞を述べ続け、音楽が鳴り終わってもまだ言うべきことを言い終えるまで絶対に引かないハートの強さに会場は拍手喝采。これに勇気を得たのか、例年以上に主張あるスピーチをする受賞者が多かった。
初ノミネートで初受賞の栄誉に輝いた主演男優賞のエディ・レッドメイン(『博士と彼女のセオリー』)は「このオスカーは……」と言った途端、その言葉に興奮したように過呼吸気味になったが、「この賞を世界中でALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘っている方々に捧げます」と言い、手にしたオスカー像について「ちゃんと面倒をみます。毎日磨きます!」と喜びを爆発させる姿が微笑ましかった。
作品賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』はメキシコ出身のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作。監督の『21グラム』に主演したショーン・ペンがプレゼンターをつとめ、封筒を破るや「誰がヤツにグリーンカードを与えたんだ」と親しい仲ゆえのキツいジョークまじりで結果を発表したが、イニャリトゥはそれを受けて「来年は政府によるアカデミー賞の移民規制が入るかもしれません」と、昨年の『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督と2年連続でメキシコ人が受賞したことにふれつつ、「この賞を同胞であるメキシコ人に捧げたい。彼らにふさわしい政府ができること、アメリカに住むメキシコ人への公平な扱いを受けることも願っています。この偉大な移民国家はそうして成長したのですから」と締めくくった。
しかし、今回最も人々の胸を打ったのは、脚色賞を受賞した『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のグレアム・ムーアのスピーチではないだろうか。類まれな頭脳でドイツ軍の暗号解読に成功した数学者でありながら、悲劇的な運命をたどった主人公アラン・チューリングの物語を脚色したムーアは「16歳の時、僕は自殺しようとしました。自分は変わっている、変なヤツで居場所がないと感じたからです。でも僕は今、ここにいます。だからこの機会に言いたい。自分は変わり者で居場所がないと思っている子どもたちへ。その通りです。君たちは変わってる。でも、そのまま変わり者のままでいて。そしていつか君が輝く番が来て、ここに立ったら、同じメッセージを次の人へと伝えてほしいです」
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