ハリウッドのヒットプロデューサーは誰か。「3傑」と呼べそうな3人をピックアップし、その手法や手腕、山あり谷ありの背景を3回に分けて解説する。1回目はジェリー・ブラッカイマー。
・ジェリー・ブラッカイマーがハリウッド殿堂入り。ジョニデやトムも祝福
プロデュース作品の多くは特殊効果を駆使したアクション映画で、火薬多めの爆破シーンや派手に建物などが破壊されるシーンで映画を盛り上げる。TVCMの監督として注目された後、1980年代から90年代にかけて、名プロデューサーのドン・シンプソンと共同で映画を製作する。ブラッカイマー最初の大ヒット作は83年の『フラッシュダンス』。その後『ビバリーヒルズ・コップ』(84年)、『トップガン』(86年)、『デイズ・オブ・サンダー』(90年)などのヒットを飛ばした。この当時は、スタートしたばかりのMTVを意識して、ノリのいい主題歌を入れ、ミュージック・クリップを使って映画の宣伝にあたった。ハリウッドでのキャリアが長いシンプソンが人脈を生かして製作にあたる一方、ブラッカイマーはTVCM界出身という視点を生かして観客が求める内容を盛り込んだ映画作りで、2人は絶妙のコンビだったようだ。
だが2人が成功すればするほどシンプソンはドラッグを濫用し、仕事に支障をきたすようになる。そして95年12月をもって2人はコンビを解消する。2人の最後のプロデュース作品となったのは、96年公開の『ザ・ロック』だが、公開を前にシンプソンは死去する。その後、ブラッカイマーは独り立ちしてディズニーとファーストルック契約(※)を結び、『アルマゲドン』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『ナショナル・トレジャー』シリーズなどをディズニーの元でプロデュースする。(※「ファーストルック契約」=企画をまず最初に提案する契約。契約を結んだ映画会社がその企画を却下した場合のみ、別の映画会社に企画を提案することができる)
そして2014年春、彼とディズニーはファーストルック契約を終了した。彼のプロデュース作は、近年『プリンス・オブ・ペルシャ』『魔法使いの弟子』『ローン・レンジャー』が期待外れの興行成績に終わっていた。特に『ローン・レンジャー』は製作費に2億1500万ドルを費やしたものの、米国での興収が8900万ドルと振るわなかったことから、契約解消の大きな要因になったといわれている。
さらに、ディズニーはおとぎ話やテーマパークを題材にしたファミリー向け作品を増やしていることに加えて、アクション映画ではマーベルと『スター・ウォーズ』を抱えているため、ブラッカイマー作品に依存する必要がないという事情もあるようだ。ただし、『パイレーツ・オブ・カリビアン5』『ナショナル・トレジャー3』などディズニーの元で製作したシリーズ映画は継続して手がける。
一方、ブラッカイマーはディズニーとの契約終了後、パラマウントと3年契約を結んだ。パラマウントは、『ビバリーヒルズ・コップ』『トップガン』『デイズ・オブ・サンダー』などを製作したスタジオで、映画界でのスタート時に戻った格好だ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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