16年間の長きに渡り輸出禁止とされていたドキュメンタリー映画
ドゥシャン・ハナーク監督『百年の夢』は、1972年に共産党政権下のスロヴァキア共和国で製作されたドキュメンタリー映画。完成後は16年間の長きに渡り輸出禁止とされていたが、禁止が解かれた直後の1988年にニヨン国際映画祭グランプリを始め、ライプツィヒ国際映画祭ドン・キホーテ賞と国際批評家連盟賞受賞、香港国際映画祭など世界各地の映画祭で上映された。日本では、1989年に第1回山形国際ドキュメンタリー映画祭にて特別招待作品として上映され、3年後の1992年5月に劇場公開されている。
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東ヨーロッパ、ポーランドとチェコスロヴァキアの国境からウクライナを経てルーマニアに至るカルパチア山脈の東側、スロヴァキアのファトラ山地。この痩せた土地で、厳しい自然条件と孤独と闘いながら、農業や羊飼いを生業として暮らしている70歳以上の老人たちを、日常生活とインタビューを通して丹念に描いた本作は、生と死についての黙想とでもいうような、哲学的世界をつくりあげている。
ある老人は、驚くばかりの精緻さで動く、「人間喜劇」と名付けたからくり人形作りに熱中している。「百年生きてきた」と語る羊飼いは、第一次世界大戦に従軍したことにより、ドイツ語、フランス語、ロシア語を始め数ヵ国語を理解できる、と語る。
また、ある男性は事故で歩くことができなくなり、25年間、膝を使って暮らしてきたにも関わらず、自力で家を建築した。老人はめんどりとともに暮らし、めんどりに聖書を読んで聞かせる…。彼らの愛や家族、夢、労働や人生の意義が語られる。
『百年の夢 デジタル・リマスター版』は12月3日よりシアター・イメージフォーラムにて公開される。
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