宇賀那健一監督&主演・PDの安倍一希が初タッグ
映画『異物-完全版-』(21年)や『転がるビー玉』(20年)を手がけた宇賀那健一監督による新作長編映画『渇いた鉢』(洋題:The Empty Flowerpot)。本作の主人公・松村大地(まつむらだいち)役を演じるのは、プロデューサーも務め、今作が映画初主演となる俳優、安部一希だ。
・夜な夜な現れる『異物』⁉ ホラーテイストなエロティック不条理コメディ!
安倍は、「テレビの中の出来事、自分達にとって一つのニュースでしかない事件。しかし確かに現実として存在している事実の下で何が起きているのか。目の届かない所にもやはり自分の知らない現実が必ずあります。この作品は殺人事件の被害者遺族を描いた映画です。しかし、こうして乱暴に『被害者遺族』という言葉でくくってしまうのではなく、被害者となってしまった方々一人ひとりの悲しみや恨みや後悔があって人生があるということを、一人の男性を描くことで表現しました。宇賀那監督を始め、たくさんの方のサポートを頂き、初めて自ら映画を企画し、主演を務めさせて頂きました。そんな何もかも初挑戦の僕に文句一つ言わず、すばらしい仕事をして頂いたスタッフ・キャストの皆様と共に精一杯一つの命に向き合って 作り上げた映画です。この作品を見ても明るく楽しい気持ちにはなれないかもしれませんが、何かもうちょっとでも生きる力となる物を拾ってもらえたらと願っております」と語った。
そして、上司の三浦役に『さがす』(22年)、『由宇子の天秤』(21年)など話題作の出演が続いている松浦祐也や、『シュシュシュの娘』(21年)で市長役を演じ存在感を見せた三溝浩二など実力派の役者たちが出演しているのも見逃せない。
世界の映画祭を席巻した『異物-完全版-』をはじめ、ジャンルを問わず意欲作を作り出す宇賀那監督が今回打ち出した新作『渇いた鉢』のテーマは、愛する家族を奪われてしまった1人の男性の喪失の物語。
宇賀那監督は、「ずっと続くと信じて疑わなかった愛すべき平穏な日常なんて、だれかの悪意(ときにそれはその人に とって正義だったりもしますが)や厄災によって一瞬で崩れ去ってしまう可能性があることを、改めて突きつけられるような日々を僕らは生きています。平穏な日常が奪い去られてからも残された者たちは日々を生きていかなければならない。 それは決して綺麗事ではないし、終わりが見えているわけでもない。この映画の登場人物たちもまた歯を食いしばりながら、そんな地獄のような日々を必死に生きています。この絶望に満ちた映画が、そんな愛すべき平穏な日常が過ぎ去ってしまった誰かの希望になるよう心から祈っています」と神妙な面持ちで語った。
ひとくくりに「被害者遺族」と世間から呼ばれてしまう人々のやり切れない思い、理不尽な処遇。周囲の身勝手な好奇に晒されるという不条理…。どうしようもなく大きな喪失感に苛まれながらも、彼は何を思い、何を願い、何故生きるのか。不安定にぐらつきながら狂おしく歩む姿をただひたすらに描き切った作品だ。
『渇いた鉢』は2022年に劇場公開。
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