(…前編より続く)本作『デュラン・デュラン:アンステージド』での彼らのパフォーマンスは、そんな近年の好調ぶりがうかがえるもので、サイモン・ル・ボン(ヴォーカル)のテンションの高さ、ジョン・テイラー(ベース)の変わらないスマートさ、ニック・ローズのクールな“大ボス”感なんかには、往年のファンもきっと感激するはずだ。
・【映画を聴く】80年代リアルタイム組も必見!デヴィッド・リンチとのコラボが話題の『デュラン・デュラン:アンステージド』/前編
マイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイやゴシップのベス・ディットーといったデュラン・デュラン・チルドレンのほか、アルバム『オール・ユー・ニード・イズ・ナウ』のプロデューサーをつとめたマーク・ロンソンらもゲストで登場し、ライヴを盛り上げる。メンバーも、ニューロマンティック時代のように退廃美に浸るのではなく、あくまでストレートにナチュラルに演奏を楽しんでいる様子が伝わってくる。
で、デヴィッド・リンチの関わり方なのだが、これがもう、よくも悪くもデヴィッド・リンチとしか言いようのないもので、オープニングからエンディングまでを完全に自分の色に染めている。モノクロを基調に、差し色としてブルーやオレンジを多用する手法も変わらない。もしコラボレーションの相手がデュラン・デュランでなかったとしても、仕上がりはきっとこうなったのだろうと思わせる、揺るぎなくダークでフリーキーでシュールレアリスティックなリンチ・ワールドだ。それを期待して見ればまったくもって裏切られることはないが、それ以上の何かを求めると、ちょっと肩透かしを食らうかもしれない。
とは言え、そんなリンチの演出がデュラン・デュランのライヴ・パフォーマンスそのものの鮮度をスポイルしてしまっているわけではない。自身もミュージシャンとして『クレイジー・クラウン・タイム』などの良質なアルバムを発表しているリンチだけに、音楽の見せ場、聴かせどころを心得たメリハリで、フルサイズのライヴを一本の物語のように見せてしまうのだからさすがだ。
彼らを80年代から知るリアルタイム組から若い世代の後追い組まで、全員が50歳を超えたグループの円熟のパフォーマンスを堪能してほしい。(文:伊藤隆剛/ライター)
『デュラン・デュラン:アンステージド』は4月17日より公開される。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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