ハリウッドの大手スタジオ、ユニバーサルの今年のラインナップが充実している。2月に公開された官能ベストセラー小説の映画化『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』が世界で5億6600万ドルの大ヒットを記録。現在公開中の『ワイルド・スピード/SKY MISSION』も全米で2億9400万ドル+米国外で8億5800万ドル=11億5200万ドルの興収をあげている(4月19日時点)。今後も7月31日公開『ミニオンズ』、8月7日公開『ジュラシック・ワールド』、8月28日公開『テッド2』と人気シリーズがずらりと控える。
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大手スタジオのラインナップ戦略は、売り上げの柱となる人気シリーズを毎年公開しつつ、シリーズ化が狙える作品を作っていくこと。シリーズ作品といっても2〜3年に1本公開するのがやっとなので、複数のシリーズ作品を持っていなければ、毎年安定した興収を維持できない。
数年前までユニバーサルの有力シリーズといえば2001年から続く『ワイルド・スピード』(新作『SKY MISSION』が7作目)くらいなものだった。そこでCGアニメプロダクションのイルミネーションと提携を結び、10年に『怪盗グルーの月泥棒3D』を公開。大ヒットしたことで柱の1つに据えることができた。今年は『ミニオンズ』が公開される他、16年冬にタイトル未定の新作、17年夏に『怪盗グルー』3作目、17年冬にDr.スースのベストセラー『グリンチはどうやってクリスマスを盗んだか』を予定している。
ユニバーサルを巡る経営環境はここ数年で変化してきた。2009年12月には、ケーブルテレビ局最大手のコムキャストがユニバーサルを所有するNBCユニバーサルの経営権をゼネラル・エレクトリック(GE)から取得。コムキャスト51%、GE49%となった。そして13年3月にはGEから49%を取得し、完全子会社化した。GEは航空機エンジンや医療機器、発電事業など幅広い分野でビジネスを行っていたため、映画事業に積極的とはいえなかった。親会社がコムキャストに代わってからは積極的に変わり、先々のラインナップを見据えてシリーズ化作りにも熱心といわれる。
戦略のひとつが製作会社レジェンダリーとの提携だ。同社は05年にワーナーと共同製作・共同出資の契約を交わし、『ハングオーバー!』シリーズや『GODZILLA』などを手がけてきたが、ワーナーとの契約が13年末に切れ、14年からはユニバーサルと契約した。提携第1弾『ドラキュラZERO』は興行的に不振だったが、現在は新たな企画を開発中で、怪獣映画の人気作『キング・コング』を基にした作品だ。コングの故郷として描かれ、数々の怪獣がコングに襲い掛かるスカル・アイランド(ドクロ島)を舞台にした『コング:スカルアイランド』で、17年春に公開が予定されている。また同社がワーナーと共同制作した『パシフィック・リム』の続編はユニバーサル配給へ移り、17年に公開予定だ。
自社単独でも16年夏にはマット・デイモンが復活する『ボーン』シリーズを公開予定。さらに、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男といったユニバーサルが得意とする往年のモンスター映画を一挙にリブートする企画を進めている。ユニバーサルはこれまで『ミイラ再生』をリメイクした『ハムナプトラ』シリーズや、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男を登場させた『ヴァン・ヘルシング』を手がけてきた。リブート企画では、それぞれのモンスター映画を単独で制作するのではなく、マーベル作品のようにクロスオーバーさせる計画といわれ、その第1弾『ミイラ』が16年夏に公開予定だ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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