『アナ雪』以降、話題作続きのミュージカル。地味ながらも名曲だらけで心に染みる『ラスト5イヤーズ』(後編)
(…前編より続く)「もう1回見返したくなる」のは、物語の構造云々という理由だけではない。ミュージカル映画として、とにかく音楽が良いからだ。本作の上映時間は94分ほどあるが、そのほとんどが“歌”で埋め尽くされている。しかも、どれもが強力なフックを持った楽曲なので、さながらキャッチーなヒット曲ばかりを集めたコンピレーション・アルバムでも聴いているかのような気分にさせられる。
・【映画を聴く】『アナ雪』以降、話題作続きのミュージカル。地味ながらも名曲だらけで心に染みる『ラスト5イヤーズ』(前編)
アナ・ケンドリックは、最近では同じくミュージカル映画の『イントゥ・ザ・ウッズ』でシンデレラ役として歌声を披露していたが、本作ではさらに歌いまくっている。次回作も大学のアカペラ・サークルを舞台にした『ピッチ・パーフェクト』ということで、いまや“歌える女優”の最注目株と言っていいだろう。なお、5月29日公開の『ピッチ・パーフェクト』は、後日、当コラムで紹介する予定だ。
はじめに書いたように、本作ではジェイミーとキャシーの時間軸が交差する形で描かれている。2人の別れの原因を作ったジェイミーの時間軸が明るく未来へ進んでいくのに対して、ジェイミーに振り回されて結果的に捨てられたキャシーの時間軸は暗く過去へ戻っていく。どこか不平等で理不尽に思えるこのカップルの顛末を、ジェイソン・ロバート・ブラウンはそれぞれの目線で見事に描き分けながら歌にしている。
昨年の『アナ雪』以来、さまざまな話題作の公開が続いているミュージカル映画。そんななかにあって本作は、派手さこそないものの、聴くたびに沁み込んでくる楽曲がずらりと揃っている。ある時にはジェイミー、ある時にはキャシーの目線で、何度も見て聴いて味わいたい作品だ。(文:伊藤隆剛/ライター)
『ラスト5イヤーズ』は4月25日より公開中。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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