映画版も徹底していい意味で中身がない!
(…前編より続く)
アメリカの児童向けチャンネル「ニコロデオン」が誇る大人気のアニメシリーズを映画化した『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』。テレビシリーズでもネタとなっているようにチーズと勘違いされそうだが、“海綿”である黄色くて四角いスポンジ・ボブが、海底都市ビキニタウンで過ごす日常を描いたギャグアニメだ。
・【元ネタ比較】(前編)超絶にくだらなくてヤバい! 中味はまったくないけど愉快で楽しい『スポンジ・ボブ』
とってもバカバカしくて、どこまでも中身がないのがこのシリーズの良さだが、映画版でもその良さが感動的なほどに詰まっている…いや、詰まってなくて中身がない。映画版だからといって下手にスケールアップ感を出そうとドラマティックにしたり、厚みや深みを与えようなんてヘマはしないのだ。
ストーリーとしても、いつものお約束。スポンジ・ボブが働くバーガーショップの人気メニュー「カーニバーガー」の秘密のレシピをプランクトンが盗み出そうと狙うというもの。『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』というから、なんだか大仰過ぎる展開になってしまってやしないかなぁと心配したが、ゴキゲンなほどちっぽけな話だ。
作り手たちがこのくだらなさこそスポンジ・ボブの魅力と自負していることが伝わってきて、微笑ましく誇らしくさえ思える。
くだらなさはちょっとシュールなほどで、どこまでもおバカな展開が畳みかけてくるのには、トリップしてクラクラしてきてしまう。映画版のプランクトンが拷問を受けるシーンでは、縛り付けられてスポンジ・ボブの「わわわわわわわわ〜」という笑い声を聞かされるというのがあるが、そんな破壊力があるほどにバカバカしい。
ストーリーも、今まで見ていたのは何だったんだと脱力するような展開で、期待以上に中身がなくてテンション高くなってしまう。中身がないついでに、『スポンジ・ボブ』のテーマの歌詞全文を記載しておこう。
「パイナップルに住んでいる/スポンジ・ボブ、ズボンは四角!/黄色いスポンジ穴だらけ スポンジ・ボブ、ズボンは四角!/いつも楽しく暮らしてる/スポンジ・ボブ、ズボンは四角!/魚はちょっと怖いけど/スポンジ・ボブ、ズボンは四角!/スポンジ・ボブ、ズボンは四角!/スポンジ・ボブ、ズボンは四角!/スポンジ・ボブ、ズボンは四角!」
どうだ? スポンジ・ボブのズボンは四角であるという、人生においてまったくもって何の役に立たない情報が刷り込まれてしまっただろう? しかも、その刷り込まれた情報は、『スポンジ・ボブ』においても全然重要ではないのだ! このあまりにも意味のないバカバカしさに引き込まれたら最後、劇場に行って、脳みそをわたあめにされるしかない!(文:入江奈々/ライター)
『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』は5月16日よりTOHOシネマズ、イオンシネマにて全国公開される。
入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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