コロナ禍の中の社会的孤立を描く『夜明けまでバス停で』。──2020年冬。幡ヶ谷のバス停で寝泊まりする、あるひとりのホームレスの女性が、突然襲われてしまう悲劇があった。非正規雇用や自身の就労年齢により、いつ自分に仕事がなくなるか分からない中、コロナ禍によって更に不安定な就労状況。そして自らが置かれている危機的状況にもかかわらず、人間の「自尊心」がゆえに生じてしまう、助けを求められない人々。本作は、もしかしたら明日、誰しもが置かれるかもしれない「社会的孤立」を描いた作品だ。
・田原総一朗「“自己責任”でなく“相互扶助”が大切」と警鐘を鳴らす映画
「もう怒ってもいいんじゃないの?」という気持ちになれたからオファーを受けました
『痛くない死に方』の名匠・高橋伴明監督の、「今、これを世の中に発信しなければ」という思いに、日本映画が誇るスタッフとキャストが集結。バス停で寝泊まりするホームレスに転落してしまう主人公・三知子役に『欲望』(05年)以来の映画主演となる板谷由夏、三知子の働く居酒屋の店長に大西礼芳、マネージャーに三浦貴大。
石を振り上げる男・工藤武彦役に松浦祐也、居酒屋の同僚役にルビーモレノ、片岡礼子、土居志央梨。ユーチューバー役に柄本佑、三知子のアトリエのオーナーに筒井真理子、介護職員にあめくみちこ、古参のホームレスに下元史朗、根岸季衣、柄本明と、実力派俳優が勢ぞろいした。
高橋監督は本作のオファーを受けた理由について「主人公がなぜ殺されなくてはいけなかったのかを考えた時に、当然犯人の気持ちから考えたんですが、加害者が被害者を殴った理由が見つけられなかったんです」と答える。
さらに、「本作のオファーがあって考えたときに、主役にするのは“世の中の不条理”ではないかと考えたんです。それに自分なりに思いを乗せて表現できればいいのではないかというのと、怒りを自分の中では直接表現しないで封印してきたつもりなんだけれども、『もう怒ってもいいんじゃないの?』という気持ちになれたからオファーを受けました」と続けた。
板谷演じる三知子が公園で出会う、古参のホームレス・バクダン(柄本明)については、「我々世代の一つの代表者ということだろうし、恨み辛みみたいなものは、個々が持っていると思うんです。例えば自分なんかがいまだに忘れられないのは、学生運動で逮捕した後に機動隊って殴るんですよ。警察は取り調べでその傷を見て、『お前、相当暴れてるな?』となってしまう」と、台詞に込めた思いを語る。
また、撮影時の面白いエピソードを聞かれると「柄本親子の押しかけ出演です。柄本明の方なんて、座⻑公演をやっている最中だったし、柄本佑だって全然スケジュールがなかったけれど、『なんでもいいからどうしても出る』って言って、当日衣装合わせをして、全体で30分もかかっていないと思うんだよね」と高橋監督。
最後には「絶対に見たらびっくりすると思います。『えっ、こうなるの?』という意外な展開を見てほしいです」と観客へメッセージを伝えた。
『夜明けまでバス停で』は10月8日より全国順次公開。
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