困窮、孤独…フィリピンでセカンドライフを送る日本人の苦悩に迫る

#ドキュメンタリー#フィリピン#ベイウォーク#粂田剛

(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
(C)Uzo Muzo Production
ベイウォーク

2021年12月に公開された粂田剛監督のドキュメンタリー映画『なれのはて』。フィリピンに生きる4人の困窮邦人を描いた同作は、各方面で話題になった。そして今回、『なれのはて』に収録できなった人物たちにフォーカスを当て再構成した、もうひとつのドキュメンタリー映画『ベイウォーク』が12月24日より公開されることがわかった。明らかになった作品の内容を紹介する。

・ドキュメンタリー映画『ベイウォーク』場面写真はこちら!

フィリピンの困窮邦人を描いた『なれのはて』には続編があった!?

本作は、のべ7年の歳月をかけてフィリピンでカメラを回し続けた粂田が、『なれのはて』に収録できなった人物たちにフォーカスを当て再構成した作品。7年の歳月をかけて撮影されたもうひとつのドキュメンタリーが展開される。

「世界三大夕日の名所」の一つと言われるマニラ。そんなマニラ市民の憩いの場が、海沿いに整備された遊歩道、ベイウォークだ。夕方までは、海沿いのそぞろ歩きを楽しむ家族連れや、夕日を眺めるカップルたちで賑わう。それが夜になると、どこからかホームレスたちが集まり、ここは彼らの「ねぐら」になる。その中にひとりの日本人がいた。赤塚崇さん58歳。裏稼業で幅を利かせた生活をしていたもののフィリピンで騙されて一文無しに。日中は露店のタバコ売りの手伝い、夜はベイウォークで路上生活をしている。愛嬌のあるその人柄が幸いしてか、フィリピン人に助けられてばかりの毎日を送っている。

一方、ベイウォークにほど近い高層アパートメントに入居した関谷正美さん62歳。日本で年金生活を送っていた関谷さんだったが、楽しい老後を夢見て「呑む・打つ・買う」が歩いてできるフィリピンに移住を決めた。ベランダから海を臨む見晴らしと、自分好みにリフォームした部屋で、第二の人生(セカンドライフ)をスタートさせた関谷さん。しかし、フィリピン人をなかなか信用できない関谷さんは、何をやってもうまくいかない。そのうちに、関谷さんは部屋に閉じこもってしまうようになる。50歳を過ぎて日本を飛び出し、フィリピンでの生活に夢をみた2人。果たして彼らを待ち受けるものとは…?

メインビジュアルには、再起をかけフィリピンで一発逆転を狙う赤塚さんの顔がメインに配置され、「夢見て、生きる」というキャッチコピーが添えられている。下段には、購入した高層マンションのベランダに立つ関谷さんの姿が配置されている。マニラの中心街、数100メートルしか離れていない場所で、対照的な暮らしをしている2人に共通しているのは、50代を過ぎて身寄りのない海外で自分なりのリスタート=再起をかけて生きているということ。その姿は見る我々自身にも、いつかくる老後の生き方を捉えなおすきっかけになるかもしれない。

公開に先立って粂田剛監督は「日本から海外に飛び出した人たちの“その後”に興味があった。彼らがそこでどんな暮らしをして、何を食べ、まわりにはどんな人たちがいるのか…その生活は幸せか? それとも不幸か? 今の自分の境遇を嘆いているのか、満足しているのか、または諦めているのか? そして故国日本に対してどんな感情を抱いているのか? 彼らのことを知りたかった。それを何らかの作品にして残したかった」と撮影の動機を説明。

続けて「2012年から2019年の間、カメラを持って20回ほどフィリピンを訪れ、多くの日本人に会った。ほとんどが男性だった。犯罪を犯して逃げてきた人、フィリピン人女性と結婚し移住した人、女性を追ってやって来てどん底に落ちた人、貧困の中家族を作り暮らしている人…当たり前だが一人ひとりにそれぞれの人生があり、それぞれの思いがあった。撮影させてくれた人も、撮影はダメだという人もいた。次に行った時は行方不明になっていた人もいた。継続的に撮影させてくれた人は7人だった。その中の4人を主人公に『なれのはて』という映画を作った。映画は第3回東京ドキュメンタリー映画祭でグランプリ&観客賞を受賞し、一般劇場公開されることになった。素直に嬉しかったが、そのあと、多少の割り切れなさが残った。映画に入らなかった人たちのことだった。長年にわたって撮影させてくれたのに、作品に結実しなかった人たち…彼らに申し訳なかった。彼らのためにもう1本、映画を作るべきだと思った」と話す。

そして「誰にも評価されなかったとしても。そんな思いで完成させたのが今回の『ベイウォーク』だ。この映画には、マニラで無一文になりホームレスにまで落ちぶれた男性と、老後をフィリピンで過ごそうと移住してきた男性が登場する。彼らの生活圏はほぼ重なっているが、互いの存在を知ることはない。片やストリートを這うように生き、もう片方は高層マンションにひとり暮らす。彼らの行く末がどうなるのかは…ぜひ映画をご覧になってほしい。自分がなぜ、日本を捨て海外に暮らす人間たちに惹かれたのか。それまでの暮らしをリセットして新しい人生を生きる彼らが羨ましかった? そう思ったこともあった。どん底で生きる彼らの暮らしの中に、むき出しの『生』を感じた? そんな瞬間もあったが、それだけではない気がした。7年間取材して2本の映画を作り、彼らのことを知るための長い旅はいったん終わったが、答えは、未だに分からない」と語っている。

『ベイウォーク』は12月24日より公開。