【今日は何の日】「国際ガールズ・デー」に、児童婚の実態に迫るドキュメンタリー&ムスリム女子の青春映画
#コラム#チャイルド・ブライド -売られる子供たち-#今日は何の日#児童婚#国際ガールズ・デー#絶叫パンクス レディパーツ!
10月11日は「国際ガールズ・デー」。国連総会が2011年12月19日に採択した記念日で、児童婚、ジェンダー不平等、女性に対する暴力や性差別の撤廃、女子教育の普及など世界中の女性が直面している問題に取り組むことを訴えるために定められた。その記念日にちなみ、ムスリムの女性がパンクバンドを通して自由な自己表現を試みる青春コメディーと、アメリカでなおも続く児童婚の実態に迫ったドキュメンタリーの2作品をご紹介する。
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既成概念なんかク○喰らえ! ムスリム女子のパンクバンドが吠える!
最初にご紹介するのは、スターチャンネルEXで配信されている英国発の青春音楽コメディー、『絶叫パンクス レディパーツ!』(全6話)だ。イスラム教の信者、ムスリムの女性たちによるガールズパンクバンドが主人公の作品である。ムスリムとパンクという一見対極にある要素を結び付けた点がまずユニークだし、ヒジャブ(ムスリムの女性が頭部を覆う布)を身につけた女性がギターをかき鳴らしたりドラムを叩いたりする光景も新鮮だ。
26歳、彼氏ナシ、彼氏いない歴26年で婚活中のまじめな理系学生アミーナと、メンバー3人+マネージャー1名のガールズパンクバンド「レディパーツ(女体の意)」という全く違う世界で生きていた者同士が、運命のいたずらで接点を持ち始める。アミーナは音楽好きでギターの腕前もなかなかだが、極度のあがり症で人前で演奏すると身体が拒否反応を起こしてしまう。それが原因で子どもの頃にやらかした失態がトラウマとなり、以来、人前で演奏することを封印してきた。一方のレディパーツは、サウンドを厚くするためにリードギターの増員を画策。ビラ貼りやビラ配りといったアナログ的手法でオーディションを告知するも、応募してきたのは箸にも棒にも引っかからない1人だけ。途方に暮れていたところ、ひょんなきっかけでアミーナを見出し、彼女を獲得すべく動き始める。人前で演奏するなんてとんでもない! というアミーナを、とある“撒き餌”を使っておびき出すのだ。
ムスリムの古典的な価値観における、「女の子がパンクバンドなんてとんでもない!」「女性が公然と自分の意見を述べるのはタブー」といった風潮に反旗を翻し、彼女たちは自分の想いをストレートで過激な歌詞に乗せて叫び続ける。会話においても、Fから始まる例のワードが頻出しまくりだ。ヒジャブを纏っていても、彼女たちはあくまで普通の今時の女の子なのである。紆余曲折を経て開催にこぎつけたワンマンライブで、オリジナル曲に交えてクイーンの『チャンピオン』を熱唱するシーンでは胸が熱くなること請け合いだ。アミーナの友人の婚約パーティーではカーテンで仕切られた2つのスペースに男女が別れて着席するなど、イスラムにおける風習が垣間見られる点も非常に興味深い。
2000年代のアメリカで児童婚が横行? 衝撃の事実に迫るドキュメンタリー
続いてご紹介するのは、アメリカの児童婚の実態に迫ったドキュメンタリー『チャイルド・ブライド -売られる子供たち-』だ。幼い少女が自分の意志に関わらず年上の成人男性に嫁がされる「児童婚」が現在も行われているのは、発展途上国など一部の地域に限られたことと思っていないだろうか? ところが、欧米先進国の、しかもアメリカにおいて2000年代の今も公然と児童婚が行われているという衝撃的な事実を掘り下げたのが本作である。
本作には、11歳や13歳で結婚してほどなく出産を経験した女性たちが登場する。しかも児童婚が行われる背景には、汚い大人の事情が二重にも三重にも絡んでいるのだ。まさか! 中世の政略結婚じゃあるまいし、先進国アメリカでそんな理不尽な結婚はありえないでしょ? そもそも法律が許さないんじゃない? と思うかもしれない。ところが、実態は想像を絶するほど醜悪だ。
アメリカの児童婚の被害者の大半は幼い時期における性的虐待の被害者であり、結婚の理由は加害者の投獄回避と親の世間への体面保持である。何の性的知識も持たない幼い自分をレイプした年上の男と結婚させられているケースが大半なのだ。アメリカの大半の州において、成人男性が16歳以下の少女と性交渉を持つのは違法である。ところが結婚してしまえば、自分の過去の悪行がチャラになって刑務所行きを免れられるのだ。被害者である少女の親も、年端もいかない娘が妊娠したとなると世間体が悪い。だったら結婚させてしまえ! というとんでもないロジックが発動されるのである。
10代で親の扶養下にあって生活力もなく、処世術の知識も乏しい少女たち、しかもお腹には新たな命が宿っているとなると他に選択肢はない。親や加害者に言われるがまま、結婚に承諾するしかないのだ。しかも、ここにアメリカの法律の抜け道がある。アメリカの多くの州では結婚の最低年齢を定めておらず、一定の年齢に達していない場合は親が承認すれば結婚が認められるのだそうだ。自分の意志はスルーで、大人の思惑により自分を汚した男と夫婦にさせられるのである。
さらに地獄は続く。自分の意志に反して結婚させられたにもかかわらず、18歳までは法的に離婚が申請できない。児童婚の被害者の家庭ではかなりの高確率で結婚後に夫のDVが発生するらしいが、保護シェルターに駆け込んでも規定により18歳以下は追い返されてしまうそうだ。離婚もできず暴力をふるう夫からも逃げられず、法律の落とし穴に苦しめられるという理不尽。そんな忌まわしい体験をした4人の女性が自らの体験を語り、さらなる被害者を出さないために法改正に向けて立ち上がる様子を描いていく本作は、一見の価値がある。(T)
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