伝統音楽の生々しく深遠な響きを現地録音。話題のハイレゾ音源も要チェック!

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『Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-』
(C)株式会社プロジェクトラム
『Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-』
(C)株式会社プロジェクトラム

『Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-』

『Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-』は、昨年発売された同名CDの制作過程を追ったドキュメンタリーだ。監督は、写真家/作曲家/レーベルオーナー/映画プロデューサーの川端潤。手つかずのピュアなミャンマーの伝統音楽をそのままの形でアーカイヴしたいという監督の思いから、2013年の4月から40日間、ミャンマーはヤンゴン郊外のスタジオにトランク7つ分の録音機材を持ち込んでレコーディングが敢行された。約100曲が録音され、そのうちの12曲がCDとしてまとめられており、その録音風景を記録したのが本作ということになる。

[動画]『Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-』予告編

現地で録音を担当したのはレコーディング・エンジニアの井口寛。フランス人ピアニスト、クエンティン・サージャックの『Piano Memories』やブラジルの新世代を担う音楽家、アントニオ・ロウレイロの『In Tokyo』といった、熱心な音楽ファンに支持される作品を数々手がけてきた人物だ。

コンピレーション・アルバム「Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-」の制作ドキュメンタリーであるから、本作はCDのサブテキスト的な位置づけと言える。よって監督がアーカイヴしたミャンマーの伝統音楽を真剣に聴きたいのなら、まずはCDを聴いた方がいい。実際、本作で見ることのできるレコーディング風景は、いわゆる“一発録り”ではなくマルチトラック録音(各パートをバラバラに録って重ねていく手法)のため、音楽の完成形はあまり作中で聴くことができなかったりするからだ。

ただ、CDを聴いてからでなければ本作が楽しめないかと言えば、まったくそんなことはない。21個の太鼓で構成されるサインワインなど、日本ではこれまで見ることさえなかった楽器の独特な音色と音階、西洋音楽のような和音の概念を持たない楽曲の構造、腹の底から突き出てくるような力強い歌声。ミャンマーの伝統音楽を形成するそういったものの魅力は、このドキュメンタリーで視覚を伴って体験した方が、伝わるものが多いように思える。そういう意味では、本作を見てからCDを聴くというパターンも大いにアリだ。

なお、このコンピレーション・アルバムは、巷で話題の“ハイレゾ音源”でも配信されている。ハイレゾとはHigh Resolutionの略で、文字通りCDやMP3ファイルよりも解像度の高い(=容量の大きい)音源のことを指す。ハイレゾを聴くには専用の機器もしくはアプリが必要になるので、まだまだCDやMP3ファイルほど普及していないが、この作品も実際に聴いてみると現地のスタジオの空気感や演奏者の息づかい、楽音の消え際のニュアンスなどにおいて、CDを上回る再現力を聴かせてくれる。

本作の公開に合わせてコンピレーション・アルバムの第2弾「Beauty of Tradition-ミャンマー伝統音楽の旅で見つけた仏教の歌-/カインズィンシュエ』のCDが7月2日にリリースされるが、こちらもハイレゾは配信サイト「e-onkyo music」ですでに先行リリース済み。ぜひとも一聴をおすすめしたい。(文:伊藤隆剛/ライター)

『Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-』は6月27日より公開中。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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