生涯現役を貫いた実力派
1944年の名作『ガス燈』、『ドリアン・グレイの肖像』(45)や『影なき狙撃者』(62)などの映画や、人気TVシリーズ『ジェシカおばさんの事件簿』(84〜96)の主人公ジェシカ・フレッチャー役で知られるアンジェラ・ランズベリーが11日(現地時間)、ロサンゼルスの自宅で亡くなった。享年96。
家族の発表によると、ランズベリーは就寝中の午前1時30分(現地時間)に息を引き取ったという。5日後の16日は97歳の誕生日だった。
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「デイム・アンジェラ・ランズベリーの子どもたちは、彼らの母親が2022年10月11日午前1時30分、ロサンゼルスの自宅で就寝中、安らかに亡くなったことを悲しみと共にお知らせいたします。97回目の誕生日まであとわずか5日でした」と始まる声明は、ランズベリーが3人の子ども、3人の孫、5人のひ孫に恵まれたこと、そして弟でプロデューサーのエドガー・ランズベリーも含めた家族に看取られたことを伝えた。子どもたちの父親である夫で、長年彼女を支えた元俳優でプロデューサーのピーター・ショウは2003年に亡くなっている。
1925年にロンドンで生まれたランズベリーは、9歳の時に父が病死した後、1940年に母や弟たちと渡米し、年齢を偽ってのナイトクラブ歌手の仕事などを経て、1944年に『ガス燈』で、メイドのナンシー役に抜擢され、映画初出演にしてアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、翌年の『ドリアン・グレイの肖像』でも同賞候補となった。
愛嬌と個性、そして確かな演技力の性格俳優として数多くの作品に出演し、1960年代からはニューヨークのブロードウェイで活躍、トニー賞はミュージカル主演女優賞(『スウィニー・トッド』)など6度受賞している。そのうち1度は2009年、舞台「陽気な幽霊」での主演女優賞で満83歳での受賞だった。
「アガサ・クリスティ原作の映画化『ナイル殺人事件』(78)やミス・マープルを演じた『クリスタル殺人事件』(80)を経て、1984年からスタートしたTVシリーズ『ジェシカおばさんの事件簿』では、さまざまな難事件を解決するミステリー作家でアマチュア探偵の主人公、ジェシカ・フレッチャー役で人気を博し、12シーズンという長寿シリーズとなった。
1991年にはアニメ『美女と野獣』でポット夫人の声を務め、近年も『グリンチ』(18)などに声の出演をしていた。
俳優としても現役で活躍を続け、2014年に大英帝国勲章デイム・コマンダーを授与された。2018年に『メリー・ポピンズ リターンズ』(18)でバルーン・レディ役を演じた。12月23日より配信開始のNetflix『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』が遺作となる。
ニューヨーク・タイムズ紙は、彼女の死後に公開することを条件に2010年に行ったインタビュー動画を公開。そこで、17歳で『ガス燈』への出演が決まった経緯や、ハリウッドとブロードウェイでの活躍、長く親しまれた『ジェシカおばさんの事件簿』について、家族についてなどを語っている。
10代で2度オスカー候補になったものの、受賞しなかったことを「幸運だった。あまりにも早く受賞してしまうのはひどい妨げになる。次に何をすべきなのかわかっていないから」と断言し、脚光を浴び過ぎなかったおかげで堅実なキャリアを築けたと語ったランズベリーは、生涯現役を貫いた。
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