日本映画界は、年代によって邦画が人気の時期と洋画が人気の時期に分かれる。1980年代から現在までを「1980年代」「1990年代」「2000年〜現在まで」と3回に分けて邦画と洋画の攻防を解説する。1回目は1980年代。
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1980年代、年間観客動員数は最高が83年の1億7043万人、最低が89年の1億4360万人とバラツキのある年代だった。洋画と邦画の年間配給収入シェアでは、邦画の最高が55%、最低が46.6%と邦洋が拮抗していた。
邦画界をけん引したのは角川映画だ。76年に『犬神家の一族』で映画製作に乗り出した角川書店の角川春樹社長(当時)は、80年に『復活の日』『戦国自衛隊』を大ヒットさせ、角川映画時代が幕を開ける。
ブームの立役者が薬師丸ひろ子だ。78年『野生の証明』で事件のカギを握る少女役にオーディションで選ばれ、その後、主演した『翔んだカップル』(80年)、『ねらわれた学園』(81年)をヒットさせる。81年12月には『セーラー服と機関銃』が公開されると配収23億円をあげ、82年の邦画ナンバーワンヒットなる。その後も薬師丸人気は続き、83年『探偵物語』、84年『里見八犬伝』『メインテーマ』、85年『Wの悲劇』が大ヒットした。
角川映画と同じく邦画界を盛り上げたのがフジテレビだ。角川映画は、映画、小説、主題歌をメディアミックスさせてプロモーションにあたる先駆けとなったが、フジテレビはテレビ局が自社の番組を使って大々的なプロモーションを行う先駆けとなった。83年『南極物語』では、主役である犬のタロとジロをバラエティ番組に出演させるなどして、映画は大ヒット。配収59億円をあげて当時の邦画歴代1位を記録した。その後、フジテレビは85年に『ビルマの竪琴』、86年に『子猫物語』を製作し、どちらもその年の邦画ナンバーワンヒットとなった。
一方洋画は、70年代後半に『ジョーズ』『未知との遭遇』を大ヒットさせた若き天才監督スティーブン・スピルバーグ(80年の時点で33歳)が、80年代に入ると監督にプロデュースに大活躍する。82年『レイダース/失われたアーク』(監督作)、83年『E.T.』(監督作、配収96・2億円をあげ当時の歴代1位)、84年『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(監督作)、85年『グレムリン』(プロデュース作)、86年『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『グーニーズ』(どちらもプロデュース作)、89年『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(監督作)、『ロジャー・ラビット』(プロデュース作)と、毎年のようにヒット作を連発させた。
洋画界を引っ張った人気スターがジャッキー・チェンだ。70年代前半にブルース・リーが起こしたカンフーブームを引き継ぐ形で、70年代後半にジャッキーが登場。笑わない渋い魅力のブルース・リーに対し、ジャッキーは明るくコミカルな動きで人気者となり、『蛇拳』(76年)、『酔拳』(78年)などで脚光を浴びる。そして80年代に入ると人気が広がり、ヒット作を連発する。バート・レイノルズやロジャー・ムーアらハリウッドスターと共演した『キャノンボール』(82年)、『キャノンボール2』(84年)がどちらも配収21億円の大ヒットを記録。主演作としては84年『プロジェクトA』が自身最高の配収16.2億円を記録したほか、85年『スパルタンX』、86年『ポリスストーリー/香港国際警察』、87年『プロジェクトA2』が大ヒットした。
ジャッキー同様、「観客を呼べるスター」がシルヴェスター・スタローンだ。76年『ロッキー』で脚光を浴びた彼は80年代に入ると、82年『ロッキー3』や83年『ランボー』など、毎年のように大ヒット作を連発する。一方、同じく「マッチョなアクションスター」として知られるアーノルド・シュワルツェネッガーが脚光を浴びたのは、82年『コナン・ザ・グレート』、84年『ターミネーター』と、スタローンから数年後。観客を呼べるようになるのは80年代後半からで、86年『コマンドー』、89年『ツインズ』がヒットした。
80年代に登場し、現在もスターとして人気を維持しているのがトム・クルーズだ。81年『エンドレス・ラブ』でデビューし、87年『トップガン』が洋画ナンバーワンヒットとなり大ブレイクする。89年に『レインマン』『カクテル』が洋画の年間2位&3位を占める大ヒットを飛ばし、その勢いは90年代に入っても続いた。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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